あの人の背中追い 206の言葉で「ありがとう」

山本亮介
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 都内でIT会社を経営する石川恭子さん(51)は、仕事用ともう1枚、別の名刺を持ち歩いている。羽織袴(はかま)姿の自身のイラスト付きで、肩書は「国際オリンピック副応援団長」。1992年のバルセロナ大会から夏季五輪を現地で応援、と自己紹介文も添えた。

 街全体が人種のるつぼのようになるのが五輪の魅力だという。東京大会のチケットも購入済みで、期間中はできる限り会場に足を運び、世界中の人たちとの交流を楽しむはずだった。だが、新型コロナで大会は延期に。海外客の受け入れ断念も決まった。そして、感染は今も再拡大している。

 ただ、それであきらめるような人ではない。制限があるなら、その中で何ができるか。そう頭を巡らせるのは、IT業界では日常茶飯事だ。「肌が触れ合うような交流が難しくても、オンラインなど新しい技術でいかに楽しめるか考えればいい」

 手始めに、国際オリンピック委員会(IOC)に加盟する206の国・地域の言葉で「こんにちは」「ありがとう」「また会いましょう」をどう発音するか、音声再生できるサイト(http://www.wbiznet.co.jp/worldgreetings/別ウインドウで開きます)を立ち上げた。新しい名刺には、サイトへアクセスできるQRコードもつけた。

 きっかけになった人がいる。「オリンピックおじさん」と言われた故山田直稔さんの姿だ。学生時代にバルセロナで会ってから、ずっと観戦を共にしてきた。その山田さんが現地で配っていたチラシに書かれていたのが、各国のあいさつだった。

 「山田さんの口癖は『ありがとうは世界のパスポート』。これを進化させられないかと考えたのが、このサイトだった」。名刺を通じて知り合った人と、オンラインでつながりながら一緒に応援する。そんな姿を山田さんが天国で笑ってみてくれたら。そんなふうに願っている。山本亮介