65歳未満お断り、異色の不動産屋 見守りサービスも

野田枝里子
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 65歳未満はお断り――。そんな理念を掲げる異色の不動産屋がある。部屋を借りたいのに、年齢を理由に断られることが少なくない高齢者向けに賃貸住宅の仲介を行う「R65不動産」だ。高齢化社会が進む中で、新たなビジネスモデルを目指している。

 東京都杉並区に本社をおく「R65不動産」。代表取締役の山本遼さん(31)が2015年に立ち上げた会社だ。きっかけは、起業前に勤務していた不動産会社でのできごとだ。賃貸住宅を探していた80代の女性が、年齢を理由に複数の不動産屋から門前払いをされていた。山本さんは、200件近く電話をかけて物件探しに奔走した。

 「元気なのに高齢だという理由だけで断られる。同じように困っている人は多いはず」。山本さんは自ら営業して人脈を広げ、「65歳以上専門」として始動した。同社のホームページでは、北海道や愛媛県など全国各地で約1千件の取り扱いがあり、都内では練馬区大田区などを中心に西東京エリアなど約200件を紹介。遠方の物件は、地元の不動産屋と提携して対応している。

 同社によると、サービス付き高齢者向け住宅や老人ホームなどの施設は費用が高かったり、介護度が低いと入れなかったりするため、一般の賃貸物件の需要は多い。独り身になった高齢者が持ち家などを手放して、新たに借りる場合もあるという。

 会社にとってもメリットはある。若い人の場合、駅から近い、築年数が浅いといった項目の優先順位が高いが、高齢者は築年数が古くても広い部屋や、階段を使わない1階の物件を希望するケースが多い。入居期間が短い学生と違い、高齢者は一度入居すると長く住む傾向にあり、空室率を下げ、改修費用も抑えられるという。

 だが、高齢者に部屋を貸す大家はまだ少ない。孤独死などによる「事故物件」のリスクを避けるためだ。そこで、同社では民間企業や行政などと連携して入居者の安否を確認する「見守りサービス」を導入、リスクを減らす取り組みも始めた。

 コロナ禍で売り上げは前年比で半数以下に減った。昨年の緊急事態宣言下、都内では通常は月に50~60件程度ある問い合わせが、1カ月間ほとんどないこともあった。それでも、都内などでシェアハウスを15棟経営しているため、「何とか生き延びることができた」。

 また、コロナで客層にも変化があったという。「以前は比較的裕福な方からの問い合わせが多かったが、コロナで生活が困窮し、立ち退きを迫られて新しい部屋を探しているといった相談が増えた」

 山本さんの最終的な目標は「R65不動産がなくなること」だ。高齢者にとっての賃貸住宅の必要性を理解してもらおうと、不動産会社や行政などと連携し、セミナーや勉強会を重ねている。「高齢者が問題なく、部屋を見つけられる世の中になればいい」と話した。(野田枝里子)