「自転車のまち」堺で考案 災害現場で活躍めざし開発

井石栄司
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 消防車両が入れない災害現場で物資などを運んで救助活動を支援する自転車の開発が始まった。アイデアを出したのは「自転車のまち」を自負する堺市の消防局。東京の企業が来年度末までの完成をめざす。実用化でより迅速な救助ができるようになることが期待されている。

 開発のきっかけは、2018年の西日本豪雨。堺市消防局は隊員100人超を広島市や東広島市の災害現場に派遣した。現場は倒れた家やがれきが散乱し、消防車両がたどり着けなかった。隊員向けの飲料水を隊員が背負ったり持ったりして運ぶしかなかった。「救助活動に人を割きたい」。隊員からはそんな声が寄せられたという。

 当時、堺市では観光用に自転車をタクシーとして使おうというプロジェクトが進んでいた。堺市は自転車産業が盛んで「自転車のまち」をPRする企画だったが、この話を聞きつけた消防局が、自転車タクシーを開発するT―TRIKE(ティートライク)(東京)に「災害現場で物資を運べる自転車もつくって欲しい」と持ちかけた。

 T社は荷物運搬用自転車を運送会社と共同開発した実績があった。さらに、悪路でも安定して走れる車両制御技術を使える権利も持ち、電動アシスト機能をつければ重い荷物や人を災害現場でも運べる自転車開発の土台はできていた。

 10度の傾斜でも荷物を運べる性能で設計した自転車の幅は約1メートル。自動車よりも小回りが利くため、がれきが散乱する現場でも道幅を確保すれば活動できるという。

 T社は国の助成制度に手を挙げ、今月、上限約1千万円の支援を受けられることが決まった。1年かけて試作車をつくり、2年後の製品化をめざす。完成後は全国の消防局に販売する予定という。

 T社担当の小野田貴啓さん(64)は「助成金は開発に向けて大きな励み。免許がなくても乗れる自転車を使って、災害現場などで活躍できるようにしていきたい」と話している。(井石栄司)