思い出ランドセル、革製品に変身「一生持ち続けられる」

森直由
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 小学校で6年間にわたり使い、思い出が詰まったランドセルを再利用し、財布やペンケース、キーホルダーなどによみがえらせる革職人が大阪府豊能町にいる。自宅2階に工房を開いて以降、ネットや口コミで評判が広がり、依頼は次第に増加。北海道から沖縄まで、全国各地から届いたランドセル500個以上から、4千個以上の革製品を手作業で生み出してきた。

 工房「ルーラル」のランドセル専門の革職人、平田薫さん(50)。保険会社員だった2011年、「自然豊かな場所で暮らしたい」と考え、出身地の大阪府吹田市から豊能町に家族で引っ越した。16年3月、次男が小学校を卒業。長男のものも含め、ランドセル2個を2階の押し入れで保管することになった。

 「ランドセルから財布でも作れないか」。兵庫県伊丹市の革職人の知人に相談。長男のランドセルを持って行くと、数時間で財布に。「こんなことができるなんて」と驚いた。

 「世の中にはランドセルを捨てられず、困っている人が多いのではないか」。ネットオークションで業務用ミシンのほか、数十個の中古のランドセルを購入した。独学でリメイクの練習を繰り返して腕を磨き、約1年半後、さまざまな革製品が作れるまでに上達。19年に会社を辞め、革職人として専念することにした。

 コンセプトは「思い出を大切に。温かみのある作品づくり」。傷や汚れなど、ランドセルの面影をいかに残すかに、最も気を使う。

 最初にランドセルのすべての縫い目を工具でほどき、20個以上のパーツに分ける。「慣れていても、分解に2時間以上はかかる」。次いで裁断機で切り、最後にミシンで縫ったり、金具を付けたりして完成させる。「ミシンで縫うのは失敗が許されない作業。今でもすごく緊張する」

 一つのランドセルから、最大で15個ほどの革製品ができる。財布やペンケース、キーホルダー、写真立てなど約30種類。全体の約4割を折り財布が占め、ペン・パスケースも人気が高い。注文を受けてから、2週間~2カ月で発送するように心がけているという。

 「こんなにかわいく生まれ変わり、感動しました」「ランドセルの分身を、一生持ち続けられると思うと幸せです」「今まで気づかなかった細かな傷を見て、うれしい涙があふれました」――。発送後、依頼者から届いた感謝のメッセージを見たとき、最もやりがいを感じる。「ランドセルの状態を見ただけで、使っていた子供の性格も分かる。ランドセルの数だけ人生の物語があり、リメイクができるのは、とても光栄なこと。これからも喜んでもらえるような革製品を丁寧に作り続けたい」(森直由)