春ニンジン、甘みの秘訣は土 搾りたてジュースに驚き
土から掘り起こされたばかりの鮮やかなオレンジ色が食欲を誘う。よく太った春ニンジンをミキサーにかけ、ジュースにしていただく。果物のようなさわやかな甘みが、のどに染み渡る。
「収穫したニンジンの味を確かめるため、こうやって飲むんです」
春ニンジンの主産地、徳島県藍住町で農業法人「阿藍(あらん)」を営む黒上隆男さん(74)が、ほおをゆるませた。
黒上さんの父、故・正紀(まさのり)さんが半世紀ほど前にニンジン栽培を始めた。高さ1・5メートルほどのかまぼこ形のビニールハウスを設ける地元伝統の「トンネル栽培」で、秋から春にかけてニンジンを育てる。
妻の晴美さん(71)、息子夫婦の雅史さん(48)と綾子さん(47)の4人で農業を営み、藍住町を中心に計約10ヘクタールの畑で春ニンジンを栽培。3~5月にかけて約400トンを関西や中四国へ出荷する。
「ニンジンの苦手な子にも食べてもらいたい」。そんな願いを込め、おいしいニンジンづくりに力を注いできた。
甘さの秘訣(ひけつ)は夏場の土づくりにある。畑では、ニンジンがしっかりと根を張るよう、トラクターで何度も耕し、粒子の細かいフワッとした土に仕上げる。うねの幅を広くし、ニンジンがのびのびと育つふかふかの土のベッドをこしらえる。
肥料にもこだわりがある。正紀さんの代から試行錯誤を重ねた末、魚粉やワカメを混ぜた特製の肥料を使う。ミネラルやたんぱく質など栄養を豊富に含んだ肥料が、ニンジンに色つやと味の深みを与えるという。
「スーパーのお客さんに搾りたてを試飲してもらうと、予想外の甘さに驚かれる。うちの子たちもニンジンジュースが大好きです」と一家そろって胸を張る。
記事の後半に黒上家おすすめのレシピを紹介しています。
徳島で春と夏に収穫されるニ…