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赤ひげ医師、津波翌日から診療「町の医者はワンチーム」

東野真和
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 東日本大震災で医院が被災した後も診療を続けた岩手県大槌町の小児科医、藤井敏司さん(70)が、日本医師会などが地域医療に貢献した医師を表彰する「赤ひげ大賞」を受賞した。「町内の医者はワンチームでやってきた。賞はその代表でもらった」

 「赤ひげ大賞」は2012年に創設され、今年は全国で5人が選ばれた。

 藤井さんは自宅と診療所、分院が津波で被災。自身は看護師らと診療所の屋上に逃げて助かった。翌日には高台の中央公民館に避難して他の医師と診療を始めた。「顔が倍ほどに腫れた男性が笑みを浮かべて近寄ってきた。知らない人だと思ったら、通院していた男性だった。安心してくれたんだと思った」

 ただ、手を洗う水もない不衛生な状態のうえ、持病の血圧の薬も患者に渡してなくなった。しばらくして体調を崩し、盛岡市の病院に入院。しかし、診療を望む人の声が届き、病み上がりで大槌町に戻ってプレハブの仮設診療所を5月に開設した。

 12月に兄(故人)が共同経営していた商業施設が再開したのに合わせ、テナントとして入った。「復興のカギは医療と経済。診療所と買い物をする場所があればこの町に必ず人は戻ってくる」と信じた。震災前から大人も対象にし、内科や耳鼻科など幅広い分野で診療していたことも役だった。「私だけではない。町内の開業医のほとんどが早期に診療を再開した」と振り返る。

 通称「パンダ医院」。38年前の開業時、看板を頼んだ業者が勝手に看板に描いて持ってきたパンダの絵からそう呼ばれている。「新型コロナウイルスに感染しないためには免疫力をつけなくては」とランニングを始め、10キロ減量した。「うちの家系は短命が多いが、少しでも長く診療を続けたい」と話した。東野真和