快走するテスラ、米中対立でどこへ行く

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アナザーノート 吉岡桂子

 中国で米国ブランドの電気自動車(EV)テスラが快走している。最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏も人気者だ。米国以外で唯一の工場を上海に置くテスラは、世界一の自動車市場でEV化のシンボルになれるのか。それとも、激しさを増す米中対立のなか、中国共産党の対米交渉の材料としてからめとられていくのだろうか。

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「最大の生産地、最大の顧客に」

 「テスラ、日本よりずいぶんと走っているんですよ。数台連なっていることもめずらしくない。私もほしくなってきました」。夫の転勤で関西から故郷上海へ戻ったばかりの友人(36)は言う。

 彼女と同世代の旧友が昨年、中国産「モデル3」を買っていた。色は白。新エネルギー車(EV、プラグインハイブリッド、燃料電池車)に対する補助金を差し引くと25万7900元(約430万円)だった。

 「米中対立? 上海人は気にしません。車は車、国は国。テスラに乗るのはかっこいいし、デザインも好み。値段も考えていた範囲におさまった」。マスク氏のことも持ち上げる。「民間人でロケットを打ち上げるとは、すごい。環境車で社会を進歩させたい人でもあり、庶民の財布の中のカネをあてにして稼ぐ馬雲(中国IT大手アリババ創業者)とは違う」

 テスラだけではないが、中国政府は新エネルギー車を普及させるため、補助金などで優遇している。乗用車の野放図な増加を避けるためナンバープレートの発給を規制している上海では、取得にかかる約150万円も免除される。テスラは2月、電池の発火や異常な加速などの問題で中国当局から行政指導を受けた。4月19日から始まった上海国際モーターショーでは、「ブレーキがきかない」と書いた白いTシャツを着た女性が、展示している車によじ登って抗議する事件も起きた。テスラの現地法人は、人気を損なうことがないように神経質な対応を迫られている。

拡大する写真・図版米国からの輸入車テスラ「モデルX」。上海で貿易会社を経営する女性(36)が3年前、約2000万円で買った。こうした人気がテスラに中国進出を急がせた=2021年4月、上海市、本人提供

 中国の自動車販売台数(2020年)は2531万台で世界一。日本の5倍以上の規模である。新エネ車は137万台で、まだ5%強に過ぎないが、伸び盛りだ。中国政府は環境対策として、35年までにガソリン車を全廃する方針だ。半分を新エネ車、残り半分をハイブリッド車(HV)にする目標を掲げる。50万円で買える庶民派国産ブランド車から高級車まで活気づく。アリババや、スマホで知られる小米科技(シャオミー)など異業種も参入を決めている。

 「テスラにとって中国は将来、最大の生産地であり、最大の顧客を抱える場所になる」。マスク氏は3月、中国中央テレビ(CCTV)のインタビューに応じ、中国政府の気候変動対策をほめたたえながら語った。

 兆しはすでにある。上海工場…

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