マスターズ中継「沈黙55秒」 実況4代目の小笠原アナ

畑中謙一郎
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 男子ゴルフのメジャー大会、マスターズ・トーナメント松山英樹が日本勢初の優勝を果たした。中継したTBSの実況担当、小笠原亘アナウンサー(48)が感極まり、55秒間、沈黙が続いたことが話題となった。

 日本におけるマスターズの人気は、TBSの中継の歴史抜きには語れない。中継開始は1976年。米東海岸で行われる大会の模様を、早朝に日本のお茶の間に届けるという当時としては冒険的な試みだった。スタッフは、宿泊代が普段の10倍近くに跳ね上がる現地の安宿に寝泊まりし、時差と闘いながら中継を続けてきた。番組として軌道に乗ったのは、「AON」と呼ばれた青木功尾崎将司中嶋常幸が活躍した80年代になってからだ。

 米メディアからも「マスターズの生き字引」と慕われた初代解説者の岩田禎夫さんや実況担当の先達は鬼籍に入った。実況4代目の小笠原アナの涙は、中継の初期から携わってきた関係者たちの思いそのものだろう。

 マスターズは4大大会の中で最も歴史が浅い。大会をどう国際化し、発展させるかに最も腐心してきた。日本の男子ツアーとTBSは、アジアの中心的なパートナーだった。

 日本選手の結果が振るわない時期、「日本は出場権の面で優遇されている」と不満を口にした欧州のメディアに対し、主催のマスターズ委員会は「我々と日本の間には特別な歴史がある」と突っぱねたこともあった。

 45年もの間、海外の一スポーツイベントを日本の一テレビ局が中継し続けている例は他にない。その中継を毎年、寝不足と闘いながら視聴してきた日本のゴルフファンの存在を大会側は熟知している。

 11日にあったマスターズの閉会式。松山の偉業をたたえる大会役員たちの温かい雰囲気に気づかれた方も多いと思う。その背景には、大会側と日本の長い歴史があったことを書き残しておきたい。(畑中謙一郎)