「漢字書きたい」3年悩み夜間中学へ 70歳からの学び

有料会員記事

土井恵里奈
[PR]

貧困で小中学校に満足に通えなかった村田十詩美(としみ)さん(80)は、70歳で夜間中学に入りました。家の近所にある校舎を毎日のように眺めるだけで、校門をくぐる勇気が出ず、3年悩んだといいます。

 「入学したいんですが」。受話器を持つ手も声も、震えていた。10年前の4月。午後4時59分だったことは、はっきりと覚えている。生徒募集の締め切り時間ぎりぎりにかけたのだから。

内職と住み込みの少女時代

 大阪・西成で小4の頃、継父が倒れた。母の内職の手伝いばかり。実父と暮らしていたときは、運転手と子守つきの裕福な暮らしをしていた。それがうそのようだった。中学で家族と別れ、酒屋に住み込んだ。配達と子守の毎日。校舎は目の前なのに行けない。働く姿を級友に見られるのが嫌だった。母が給料を前借りに来る姿を見るのもつらかった。

 17歳で結婚した相手は、酒と博打(ばくち)と病気はしても稼ぎはしない。入院先のベッドの上でもマージャンをした。子は4人。ミシン工場、喫茶店、スナック、内職の編み物。働きまくった。子が巣立ち、鏡台と服だけを持って、夫と暮らした家を出た。これでどこへでも行ける、と何かが落ちたように体が軽くなった。68歳で仕事をやめ、ふと思った。「漢字、書けるようになりたいな」

 夜間中学は役所の広報誌で知…

この記事は有料会員記事です。残り1136文字有料会員になると続きをお読みいただけます。