「1円単位で現金化を」厚労省、デジタル給与払いに条件

山本恭介
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 「○○ペイ」といった電子マネー口座に会社が給与を直接振り込むことを認めるかをめぐり、厚生労働省は19日、「デジタル払い」を担う事業者に求める条件案を、労使の委員らでつくる審議会に示した。金融庁厚労省による「2階建て」の規制で安全性を確保する狙いだが、監督能力を心配する声もあがった。

 労働基準法では、給与は現金で全額払うのが原則とされ、銀行などの口座に振り込むのは労働者の同意を得た場合の例外とされる。

 政府は電子マネー口座も例外に加える方針だが、安全性への懸念も大きい。そのため、給与の振込先にできるのは、資金決済法に基づく金融庁の規制に加え、厚労省が求める条件も満たした資金移動業者に限るアイデアが示された。

 厚労省はまず、電子マネー口座への振り込みも働き手の同意が前提とした。そのうえで、①破綻(はたん)してもすぐ保証する仕組みがある②不正による損失が補償される仕組みがある③現金の受け取りや口座への資金移動が、1円単位でできる④業務や財務の状況を適時に厚労相へ報告できる体制がある⑤確実に払える技術力や社会的信用がある、といった条件を求めた。

 だが、労働者側の委員から厚労省のチェック能力について「(業者から提出される)書類を形式的に確認するだけでなく、実効性をどう確保するのか」と疑問の声があがった。資金移動業者は利用者の購買履歴を知る可能性もあることから、個人情報の厳しい管理を求める意見も出た。

 経営者側の委員も、電子マネー口座の上限額に達して給与が全額振り込めないなどのエラーが起きた場合、労基法に触れる可能性があるため、「使用者側に責任が問われないことを明確に」と注文した。

 政府はもともと給与のデジタル払いについて2020年度中の実現を目指していた。だが、電子決済サービス「ドコモ口座」を使った不正引き出し問題が昨秋発覚するなどし、議論が遅れた。厚労省は21年度のできる限り早期に実現をめざすとしたが、正確には見通せていない。(山本恭介)

◆給与のデジタル払いを担う事業者に厚労省が求める条件案

①破綻してもすぐに保証する仕組みがある

②ハッキングなどの不正の損失を補償する仕組みがある

③現金自動支払い機などでの現金の受け取りや口座への資金移動が1円単位でできる

④業務や財務の状況を適時に厚労相へ報告できる体制がある

⑤確実に払える技術力と社会的信用がある