飲食店のシフト減「働きたい…」 まん延防止20日から

新型コロナウイルス

茂木克信
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 新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」が20日、神奈川県内では横浜、川崎、相模原の3市に適用される。飲食店への営業時間短縮の要請は1時間繰り上がり、午後8時までとなる。川崎市内の飲食店で働くパート従業員の60代の女性は嘆く。「働きたい……」

 女性はシフト制で働いている。シフト制は本来、労働日数や労働時間が雇用契約で決められているが、コロナ禍で仕事が激減したことで、他のパート従業員も含めてシフト全体の数が減っている。女性は非正規雇用ならではの立場の弱さを痛感することになった。

 コロナ禍の前、女性は金曜~月曜の4日と祝日に、1日4~5時間働く契約を店としていた。給料は月7万~8万円で、臨時出勤もした月は10万円を超えた。年金も月5万5千円あり、一人暮らしのアパートの家賃を月5万円払っても十分に暮らせていた。

 ところが昨年3月、コロナの第1波で客が減ると、月20日ほどだったシフトは8日に削られた。他のパートも同様だった。文句を言うと解雇されるかもしれないと、受け入れた。

 3月の給料は3万円弱になったが、店は「シフトの削減は強制ではない」として、その分の休業手当の支給を拒んだ。補償がないのは納得がいかなかった。個人で入れる労働組合に加入して交渉を続け、同年9月、3月分について5万円の追加支給で妥結した。

 店は4~5月、最初の緊急事態宣言を受けて臨時休業した。この間の休業手当は出たが、月4万円に満たなかった。仕方なく、別のホテルのレストラン部門でも働き始めたが、ここもコロナ禍のあおりでシフトが思うほど入らず、7月に辞めた。

 一方、店は6月から徐々に営業を再開したが、シフトに入れるのは週に1、2日だけ。いつの間にかシフト表が壁から消えた。8人いたパートは、一人また一人と辞めていった。

 給料が減った分、出費を切り詰めた。買い物はスーパーの開店時に行き、半額になった前日の売れ残りや見切り品を買った。外食をやめ、食費を以前の3分の1の月1万円に抑えた。出勤日は賄いでおなかを満たせるが、その機会も減った。店から支給される交通費のバス代を浮かすため、片道30分以上歩いた。数百円が貴重だった。

 10月末、女性ら残った4人のパートは雇用契約の変更を迫られた。コロナ禍の前は週5~6日入る契約の人もいたが、11月からは4人均等に週2日だけ。「店も苦しいのでわかってほしい」。そう言われるとみんな拒めなかった。

 そのころから女性は、掛け持ちで働ける仕事を探し始めた。スーパーの品出し、マンションの管理事務……。でも年齢のせいか、どこも雇ってくれない。週2日のはずのシフトはコロナの第3波で守られず、給料は月3万円台にとどまった。クリスマスのころ、初めてフードバンクを利用した。貯金は底をつき、親類になじられながら金を借りた。心身ともに疲れ果てた。女性は今年2月末、生活保護を申請し、3月1日付で認められた。

 2回目の緊急事態宣言が先月21日までで解除されると、人事異動や入学祝いなどの宴会の予約が入り出した。その矢先、今度は重点措置の適用が決まった。女性は悔しくてたまらない。「どうして弱い立場にいる人にしわ寄せが来るのか。シフトが早く元に戻ってほしい。みんな、働きたいんです」

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 重点措置の期間は20日から5月11日まで。飲食店に対する時短要請は、対象の3市以外の地域は午後9時までで変わらない。(茂木克信)

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 コロナ禍が長引く中、シフト制で働く非正規雇用の就業者の労働時間がいっそう脅かされている。

 野村総合研究所が2月、全国の20~59歳のパート・アルバイト約6万5千人(うち女性約5万7千人)に実施したアンケートによると、「シフトが減少している」人は、男性34%、女性29%に上った。「シフトが5割以上減少」と答えた人は、女性は全体の13%を占め、昨年12月の調査より3ポイント近く上昇した。

 野村総研は、シフトが5割以上減少したのに休業手当を受け取っていない人を「実質的失業者」と定義。そうした人が全国に男性43万人、女性103万人いると推計した。武田佳奈・上級コンサルタントは「シフト制で働く人は女性が圧倒的に多い。就労意欲は高いので、打撃が大きい飲食業など対人サービス業からの転職を促す支援策の拡充が必要」と話す。「今を乗り切るためには一時的な生活保護も前向きな選択肢の一つで、そのうえで早急な自立支援も大切だ」としている。

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