山中に女性遺骨「事件性なし」 遺族が殺人容疑で告訴へ

原口晋也
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 2019年5月に長崎県西海市で高齢女性が行方不明になり、翌年7月に胴体の遺骨を遺族が見つけた。険しい山中で見つかったため、遺族は「足が悪い本人が一人で行ける場所ではない」と第三者の介在を疑ったが、県警は今春「事件性なし」と判断し、捜査の打ち切りを告げた。遺族は「本当に捜査を尽くしたのか」と疑い、近く被告訴人不詳のまま殺人容疑などで県警または地検に告訴状を出す。

 女性は同市西彼町鳥加郷(とりかごう)の田川タケさん(当時89)。19年5月6日夕方に帰宅した長男の義久さん(71)が不在に気づき、同7時ごろ西海署に届け出た。消防団と同署などが付近の山を中心に捜したが、遺留品も見つからず、一斉捜索は8日いっぱいで打ち切られた。

 翌20年7月8日、豪雨の後に骨盤の一部と片方のサンダルが近くの水田で見つかった。11日には山中で衣類に包まれたあばら骨ともう片方のサンダルも見つかった。県警はDNA鑑定で本人と確認。亡くなったのは発見場所付近の沢か、さらに上流とみられると遺族に説明した。

 あばら骨などが見つかった一帯は昔の棚田跡。木材搬出用の起伏の多い未舗装の作業道を通らないとたどり着けない。タケさんは80代になって足が弱くなり、14年に左足を手術。行動範囲は自宅から約150メートルの親戚宅までだったという。

 遺族は、タケさんが軽い物忘れはあるものの徘徊(はいかい)歴はないことや、遠出はできないことから、第三者の介在を疑い、連日署を訪ねて疑念を訴えた。しかし、署は今年3月、「捜査を終え、結果を検察に送る」と遺族に報告した。

 署は遺族に対し、遺骨の鑑定について「ひどい暴力を受けた形跡はない」、歩行能力については「自分で歩いて行くのは困難だと思うが、不可能とまでは言えないのでないか」と説明している。今春西海署に着任した畑上重彦副署長は「捜査は十分尽くしたと聞いている」と話している。

 義久さんによると、署の当時の担当課長は失踪の2日後、早々に「事件性はない」との見立てを告げたという。この課長は取材に「そう言ったかどうかも答えられない」と話した。

 「母が心配でたまらず、捜索の参考になればと思って訴えてきた。一度下した判断は見直さないのだと感じた」という義久さん。「それでも真相解明は県警に頼るしかないんです」と告訴状提出に踏み切るという。(原口晋也)