王様が2人、喜びも悲哀も 右代啓祐と渡部暁斗の共通点

有料会員記事

構成・勝見壮史、堀川貴弘
【プロローグ動画】右代啓祐vs渡部暁斗、キング対談
[PR]

 陸と雪上でそれぞれ「キング」と呼ばれるスポーツの第一人者が、オンラインで語り合った。陸上10種競技の右代啓祐(34)と、ノルディックスキー複合の渡部暁斗(32)。2人も驚く共通点の数々とは。

 〈この対談まで面識のなかった2人。それでも、互いに気になる存在だった〉

 右代 複数の種目で戦うという共通点を持っていたので、冬のシーズンになると、すごく気になって結果は見ていました。

 渡部 ノルディック複合の王者は「キング・オブ・スキー」と言われることがあります。多分、10種競技の王者が「キング・オブ・アスリート」と呼ばれているところからきているのかなと、僕は思っています。「10種目もやるのか」というあこがれがあり、そこでトップに居続ける右代さんはすごいなと思って、夏の五輪は見ていました。

 〈複数種目を鍛えるため、それぞれ練習に工夫をこらす〉

 右代 単独種目の選手の10倍練習しないといけないイメージはありますが、実際は1日に2種目程度です。1週間のサイクルで、10種目に取り組んでいます。まんべんなくやるようにしています。

 渡部 僕の感覚的には、すべての練習を10とすると、ジャンプと距離スキーが3、3ぐらい。あとの4は、体をどれだけうまく使えるかというところにフォーカスしています。自分の競技の練習が年々少なくなっている感じなんです。動きの幅を広げる方が、最終的に自分の競技に生きる感じがしていて。

 右代 僕もまさに、練習の内容を体の使い方にシフトしています。週1回トレーナーについてもらって、出力を60%に落としながら、100%の体の使い方で反復することを続けています。いままでは「全力で投げれば飛ぶ」みたいな、がむしゃらなところがありましたが、力の入るポジションを確認しながら行っています。

右代啓祐(うしろ・けいすけ)

1986年生まれ、北海道出身。スズキ浜松AC時代の2011年に陸上10種競技で日本選手初の8千点超え。2014年に8308点の日本記録をマーク。14、18年アジア大会連覇。五輪はロンドン、リオデジャネイロ大会ともに20位。世界選手権は5大会連続出場中で最高は13年の13位。日本選手権8度優勝。18年4月から母校国士舘大の講師を務める。196センチ、95キロ。

 渡部 最近よくやっているのは、ピラティス。機械を使って独自のメソッドをやっている方がハワイにいて、1回やってみたところ、「これいいな」と。この姿勢でも力が入るんだとか、力が入っていないところが見つかる。知ったことを生かすと、自分が今までやってきた練習の効果も変わってくる。使える可動域も増えてくる感じです。

渡部暁斗(わたべ・あきと)

1988年生まれ、長野県出身。地元の白馬高在学中の17歳で2006年トリノ五輪出場。早大をへて、北野建設に所属。09年世界選手権団体で優勝。14年ソチ五輪と18年平昌五輪で2大会連続の個人銀メダルを獲得した。17~18年シーズンにワールドカップ(W杯)総合初優勝。21年1月には荻原健司に並ぶ日本選手最多のW杯通算19勝目を挙げた。173センチ、60キロ。

 〈専門外の競技から得る刺激にヒントが詰まっているという〉

 渡部 例えば、マウンテンバイクのダウンヒル。最初はスピードが怖くて、ブレーキを握ったまま下っていきますが、加減速のコントロールがブレーキ無しでできるようになってくると、スキーをどのタイミングで走らせて、どのタイミングで違う技術へ移行するのかというイメージづくりに役立ちます。あとはライン取り。カーブにこう入って、こっちに抜けた方がスピードを殺さずに抜けられるな、と。マウンテンバイクを真剣に速くなろうとすることで、スキーにつながります。

 右代 すごく分かります。初めてやるスポーツで体の動かし方を一から学ぶと、「これは陸上に生かせる」と気付く瞬間があります。昨年11~12月のオフシーズンには、プロ野球選手に投球を教えてもらいました。10種競技には円盤投げ、砲丸投げ、やり投げと投げる種目が三つある。力を投てき物に伝えるには、下半身から上半身に力を変換させないといけない。陸上のどの投てき物より、野球の球は軽いので力を込めやすい。ウォーミングアップとかで使います。プロ野球選手の投球映像を見て、自分なりに解釈してマネしているうちに、気付いたら球が速くなっていました。

 〈複数の種目をこなすゆえの悩みも、ともに抱える〉

冬の王様の悩み、そして夏の王様が「百獣の王」を尊敬する理由とは? 対談の楽しいやり取りをまとめた本編動画は記事後半で。

 渡部 2、3シーズン前、距…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。