クイズ王伊沢拓司が考える、学びが楽しい二つの理由

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聞き手・西本ゆか
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 ユーチューブにテレビにイベントと、マルチに活躍する「クイズ王」、伊沢拓司さん(26)。CEOを務める教育コンテンツ会社「QuizKnock」では、子供を無理なく「知」へといざなう「楽しいから始まる学び」の普及にも力を入れる。新聞の見出しを眺めて「知」への間口を広げた少年が、膨大な知識を糧に成長する過程で見いだした、「学び」を楽しむ極意を語ってくれた。

 ――「知」との出会いの原点は

 小学1年で朝日小学生新聞を読み始めた、といえば聞こえはいいですが、目当ては漫画の「忍たま乱太郎」。小4で本紙デビューした時も、目当てはスポーツ面とテレビ欄、やっぱり漫画の「ののちゃん」でした。子どもにとって、難しそうなニュースがふりがなもなく並ぶ紙面は、敵陣のようなもの。フレンドリーな漫画の存在は、新聞への入り口としてとても大きく、有効です。

 とはいえ社会面の漫画を読めば近くのニュースが目に入り、スポーツ面へとめくる過程で政治面や経済面も経由する。紙の新聞は、この偶然の出会いが面白い。子どもの世界では接しない専門用語や興味・関心の外側にある情報も、いや応なく目に飛び込む見出しの中で、意識せぬまま「初めまして」を済ませておけば、次に出会った時に「見たことある」と親しみがわく。知識を得るのはおっくうですが、興味があれば楽しさが先に立って「おっくうの壁」も低くなり、次はもっと深く知りたくなる。親に新聞を読めと言われたことはありませんが、いつもリビングや食卓にあり生活の一部だったから、僕も自然と手に取った。子どもと新聞の出会いは漫画が読めればOKと思います。漫画のついでに眺める見出しの単語だけでも、そんな「楽しいから始まる学び」の第一歩になりますから。

 ――そのころ得た知識は生かされていますか

 幼い僕が新聞で得たはずの情報自体は、正直ほとんど覚えてないです。では無意味かというと、そうではない。内容は残っていなくても、「知ってみたら楽しかった」という記憶は残っていますから。面倒だからと調べず放置することで、「知る」ハードルがどんどん上がる大変さは、むしろ大人になってからのほうが実感があるでしょう。だからこそ「楽しい」と感じやすく、調べず放置することに慣れてしまっていない子供のうちに、知ること自体を楽しむ好奇心の習慣に親しみ、少しずつハードルを下げておくことが大事です。遠回りなようでも、僕にはその「知ってみたら意外と面白かった」という体験の方が、実用的な一つ二つの知識を得るより大きかったと思います。

 紙媒体の雑誌も好きですが、新聞と共通するのは一覧性。段組みで目線の動きも含めて知るための流れができており、図表も大きく見やすくて、興味や関心の及ばぬ情報にも自然と目が行く構造です。ニュースの配置がタイムライン形式でないことにも価値がある。テレビやSNSは時と共に情報が上書きされますが、紙媒体は自分のペースでいつでも読め、他のニュースとの関連も視覚的にとらえられるので。限りある紙面だからこそ、割かれた「面積」も重要です。多くのニュースの中での扱いは、読み手が情報の重みを判断する助けにもなるでしょう。こうした面的な情報の広がりは、とても価値のあること。だからこそ、様々な「知り方」に触れておくという意味で、新聞そのものを子供のころに「味見」しておくことは価値を持つと思います。

 ――大人になると「楽しい」から始められない学びも出てきます

 もちろん「楽しい」と感じづらいジャンルはありますが、「嫌なことについてどう知ろうか」と発想を変えるなど、そのジャンルのみに限定してものごとを考えないことが大事かな、と思っています。「知りたいけどおっくう」という壁を越える経験、越えた先には楽しい世界が広がっているという経験を、他のジャンルで積み重ねれば、嫌なジャンルの壁も越えやすくなる。普段からの「知」の習慣が大事です。

 学びを「楽しい」と思う理由は二つあり、一つは純粋に興味関心の対象であること。子どもはこの要因が大きいが、大人はいきなり未知の何かを「好き」になるのは難しい。だから二つめの理由が大事になります。

 それは、そのジャンルを知り、学んだ自分、スキルを得た自分を「カッコいい」と思い、そんな「カッコいい」自分になるのを楽しむこと。知の追求ではないことを不純に感じるかも知れませんが、結果は「知っている」ことに変わりなく、僕はむしろ大人が真に目指すべき目的は、こちらではないかと思っています。

 なぜなら、そのほうが手っ取り早く、わかりやすい場合が多いからです。もちろん子どもたちも、これでいい。誰かに憧れ、「この人のようになりたい」「あんな仕事がしたい」をきっかけに「学び」のモチベーションを得、「壁」を越えられるのであればそれでいいし、壁を越える体験も重ねることができますから。

 クイズ好きな子どもが、僕の…

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