愛知の町で考えた リコール署名活動の「無形の蓄積」
編集委員・高橋純子
高橋純子の「多事奏論」
東京駅から新幹線に乗り込んだのは3月末、知事リコールの署名偽造で揺れるあの愛知県にある東栄町というまちで、町長の解職請求(リコール)に向けた署名活動が始まりますよと聞いたから。名古屋駅から車で約2時間、奥三河なる山あいに位置する人口約3千人の町である。
発端は、町営の診療所で人工透析が中止されたこと。一方、10億円超をかけて入院病床のない診療所を新設する計画が進められており、反対する住民グループは今年2月、必要署名数の18倍を集め、透析の再開などを町長に義務付ける条例改正を直接請求したが、3月議会で否決された。
町長リコールにまで踏み出していいのか? 消極論も少なからずあった。しかし、町長の後援会が2月に全戸配布していたチラシが、背中を押す格好となった。
〈まさか!!あなたも誰かに!?〉〈知らないうちに被害者として巻き込まれてるかも? あなたは大丈夫ですか…〉
「知事リコール署名83%無効」の見出しを掲げた中日新聞の記事が貼られ、「署名の偽造は懲役」などと書かれていた。
県知事リコールの不正と同一視するなんておかしい――4月1日、町長リコールが告示された。
村上孝治町長に尋ねた。なぜ…