仏文学者、演出家の渡辺守章さん死去 多彩な舞台演出

 フランス演劇・文学の深く幅広い研究と翻訳、多彩な舞台演出で知られるフランス文学者、演出家で東京大名誉教授の渡辺守章(わたなべ・もりあき)さんが11日、胸部大動脈瘤(りゅう)破裂で死去した。88歳だった。葬儀は近親者で営んだ。喪主は長男敦彦(あつひこ)さん。

 東京生まれ。東京大大学院を経て東京大教養学部教授、パリ第3大客員教授、放送大副学長、京都造形芸術大(現・京都芸術大)教授などを歴任。専攻はフランス文学と表象文化論。

 70年に観世寿夫(かんぜひさお)らと結成した「冥の会」で「アガメムノーン」などを演出し、79年から演劇集団円の演出家として、西洋演劇と能などの古典芸能の様式を融合させた知的で斬新な舞台をつくった。86年のラシーヌ「悲劇フェードル」はパリでも上演。劇団外でも野村萬斎さんを起用した90年の「ハムレット」など多くの作品を手がけた。96年から空中庭園を主宰。

 大正時代に駐日大使だった劇作家・詩人ポール・クローデルをライフワークとし、戯曲や詩を題材にした創作能を上演したほか、16年には翻訳も手がけた大作戯曲「繻子(しゅす)の靴」を8時間超かけて全編上演した。

 親交があった哲学者ミシェル・フーコーの日本への紹介でも知られ、フーコーとの共著「哲学の舞台」、訳書「性の歴史Ⅰ 知への意志」がある。

 ほかに著書「虚構の身体」「越境する伝統」、訳書「ラシーヌ論」「マラルメ詩集」など多数。06年に「繻子の靴」の翻訳で毎日出版文化賞。19年レジオン・ドヌール勲章シュバリエ。20年から日本芸術院会員。