横浜・米軍跡地のテーマパーク誘致、ディズニー級困難に

武井宏之
[PR]

 【神奈川】横浜市西部に広がる米軍施設跡地で、テーマパーク誘致の検討が続けられている。市が昨年3月に計画で示した将来的な跡地の集客目標は、東京ディズニーランド千葉県、TDL)並みの年間1500万人。だがそれから1年以上経っても、具体像は明らかにならず、計画は暗礁に乗り上げているとみられる。

 テーマパーク誘致が検討されているのは、横浜市瀬谷、旭区にまたがる米軍上瀬谷通信施設跡地。東京ドーム52個分に当たる約242ヘクタールの広大な土地だ。南北に貫く通称「海軍道路」(環状4号線)を歩くと、桜並木の両脇に青々とした草原や、焦げ茶の畑地が遠くまで広がる。

 林文子市長は2019年12月、ここに「テーマパークを核とした複合的な集客施設の誘致を想定している」と明かした。約125ヘクタールを「観光・にぎわいゾーン」として開発する。昨年3月に土地利用基本計画として正式決定し、将来の跡地全体の訪問者数を「年間1500万人」と掲げた。

 テーマパークの検討を主体的に進めているのは、「まちづくり協議会」という民間地権者約250人でつくる組織だ。

 協議会は19年10月、横浜市に本社を置く相鉄ホールディングス(HD)を「検討パートナー」に選んだ。相鉄HDが実質的にテーマパーク誘致をめぐる交渉を担っているとみられる。

 相鉄HDは検討パートナー選定に先立つ19年春、地権者らにテーマパーク誘致を提案している。朝日新聞が入手した協議会での説明資料では、「テーマパークを核とした観光開発」が自社の「ベスト案」と強くアピールした。

 海外調査機関の調査結果として、居住人口や観光客が多い首都圏の市場規模などから、「超大型テーマパーク」の実現可能性があると言及。「超大型」の具体例としてTDLやユニバーサル・スタジオ・ジャパン大阪市)などを挙げた。

 コロナ禍前の入園者数が年間1500万人以上とされるTDLは、テーマパークエリアが約50ヘクタール。「観光・にぎわいゾーン」はその2倍以上の広さがある。

 市も独自に検討し、大規模テーマパークを中心に年間1500万人の集客が十分可能と判断したという。

 だが、市や相鉄HDの当初のもくろみ通りにいかなかった可能性が高い。

 関係者への取材を総合すると、相鉄HDは水面下で米大手映画会社と共同事業を目指して交渉したが、20年春に不調に終わった。1千億円規模ともされる投資への合意が得られなかったとみられる。

 その後も複数の事業者と協議し、テーマパークを含めた複合的な集客施設の検討を続けているが、「超大型」の実現は困難になったとみられる。コロナ禍で事業者や相鉄HD自身の経営が悪化したことも影響を及ぼしているようだ。

 地権者の多くは、検討の詳細を知らされていないとみられ、「我々が考えていたものとは、微妙に違ったものになってきたと感じる」との声が上がる。

 だが、市は「年間1500万人は見込める」との立場を変えておらず、平原敏英副市長は朝日新聞の取材に「時間がかかっているのは事実だが、検討は進んでいる。公表できる時期が来れば公表する」と話す。

 一方、まちづくり協議会の幹部は「取材には応じかねる」、相鉄グループの広報担当は「協議会への提案内容はお答えできない」としている。

 テーマパークの具体像がいつ、どのように示されるかははっきりしない。武井宏之

     ◇

 旧日本海軍の施設を終戦直後に米軍が接収。いったん解除されたが1951年に再び接収され、米海軍の通信施設として使われた。

 2015年6月に日本側に返還。面積は約242ヘクタールで、防衛省南関東防衛局によると、平成以降に全国で全面返還された米軍施設で最も大きい。民有地が約45%、国有地が約45%、残りを市有地が占める。

 市は昨年3月、土地利用基本計画をつくり、「郊外部の新たな活性化拠点」として開発することを決めた。農業振興(約50ヘクタール)、観光・にぎわい(約125ヘクタール)、物流(約15ヘクタール)、公園・防災(約50ヘクタール)の4ゾーンを設定している。