創業230年、福岡の老舗酒造場が廃業へ ファン惜しむ

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島崎周
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 江戸時代から続く福岡市の酒造メーカー「綾杉(あやすぎ)酒造場」がこの夏、230年近い歴史に幕を下ろす。天神で生まれ、街に根付く老舗として、酒文化の発信にも取り組んできた。今月「蔵じまい」のイベントが開かれ、多くのファンが別れを惜しんだ。

 綾杉酒造場は1793(寛政5)年、いまの福岡市中央区・天神で創業した。「綾杉」は香椎宮の神木の名にちなむ銘酒で、城下町福岡の地酒として長年親しまれてきた。

 1958年ごろ福岡市南区の現在地に移転したが、経営難や、都市化でいい水が手に入りにくくなったため、70年ごろ以降は自前での仕込みはやめた。それでも火入れや瓶詰めの工程は続け、味を守ってきた。

 酒造場の9代目代表、中尾卯作(うさく)さん(71)にとって、幼いころから酒造場は身近な存在だった。あたたかいこうじ室で冬場に遊び、職人に怒られた。高校卒業後は東京で就職したが、いつかは蔵を継ぐという思いがあった。40歳のころ酒造りの講習を受け、湿気が多い日本の風土をたくみに生かし、活発化した微生物によって酒がつくられることに面白さを感じた。父が亡くなり、2005年に跡を継いだ。

 「酒の周りにある文化を伝えたい」と、酒造場でイベントを積極的に開催。バイオリンの演奏会や、大杯に映る月をのむ企画もした。銘柄のバリエーションを増やし、創業地・天神に販売店舗を開いた。

 だが、酒の仕込みをしない酒造りは新しい酒を生み出しにくく、次第に行き詰まりを感じた。数年前から廃業を考え、決断した。「自分の代で途絶えさせてしまうのはやはりさみしい」

 中尾さんは今月17日、綾杉…

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