与党、1週間で急転「身内批判」 参院広島再選挙

大久保貴裕、東郷隆
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 河井案里氏の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙は、25日の投票日が近づくにつれ、低調だった「政治とカネ」の論戦が急に激しさを増してきた。与野党の接戦が伝えられる中、両陣営に焦りもにじむ。

 告示された8日朝。自民党の新顔西田(にした)英範氏(39)=公明推薦=の第一声に、「政治とカネ」「河井氏」といった単語は登場しなかった。「事件を思い出させると票が逃げかねない」(陣営幹部)との危機感からで、買収事件を「厳しい逆風」「大きな宿題」とあえて抽象的に表現。7分間の演説の大半は、コロナ対策や災害復興など政策論に割いた。

 しかし1週間後、演説内容は急変する。買収事件で罪に問われた河井克行被告と妻の案里氏の地元・広島市安佐南区で15日に開いた集会で「党本部からの1億5千万円をはじめ、私たちに見えない多くの問題が残った」と切り出し、「党本部は透明化、納得できる説明をすべきだ。自民党は変わらなくてはならない」と身内批判を展開した。演説後、記者団に理由を問われると「県民が感じていることをしっかりと議論して、整理する」と息巻いた。

 作戦変更の理由の一つが、報道各社の情勢調査で明らかになった支持離れに対する焦りだ。自民関係者は「自民党をぶっ壊す」と訴えて世論の支持を集めた小泉純一郎元首相の手法をまねた、と解説。演説での事件への言及は日を追うごとに多くなり、21日は12分間のほとんどを割いた。

 ただ、自民支持者にすら「事件に辟易(へきえき)した」との声は根強いだけに、ある自民県議はこう打ち明ける。「この手法が集票にプラスか、マイナスか、全く読めない。もはや賭けだ」

 一方の野党側も一層トーンを強めている。

 「再選挙の最大の争点は『政治とカネ』の問題だ」。諸派新顔の宮口治子氏(45)=立憲民主、国民民主、社民推薦=は週末の18日、広島市中心部での街頭演説で声を張り上げた。冒頭から再選挙のきっかけとなった買収事件に触れ、「今の政治が一部の人にしか向いていないから起きた」と自民党の責任に言及し、「変える勇気を持ってください」と支持を呼びかけた。

 宮口氏に政治経験はなく、発達障害のある長男ら3人の子どもを育ててきた「市民目線」がアピールポイント。陣営には当初から「県民は連日の報道で買収事件にうんざりしている」「子育てで感じた課題を伝えた方が共感は広がる」という見方があり、演説で買収事件についてはあまり言及してこなかった。その代わり、応援弁士の国会議員らが自民批判を展開する「役割分担」で支持を訴えてきた。

 しかし、選挙戦を通じて「買収事件による政治不信から棄権する人が少なくない」(陣営幹部)との焦りが高まった。一方、街頭では「政治とカネ」に関する声が多く届き、関心の高さを感じていた。報道各社の世論調査でも、この問題を重視して投票する人が多いことも分かった。別の陣営幹部は「有権者の投票意欲を高めるために『政治とカネ』の訴えを強める。自民党の批判票をより取り込みたい」と話す。

 立憲代表の枝野幸男氏は18日、自民が強いとされる呉市の駅前に駆けつけ、街頭演説でこう呼びかけた。「お金を配って票を買う政治がおかしいと思うなら一票を託して頂きたい。投票に行かないのは賛成するということだ」

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 再選挙には他に、いずれも新顔で介護職員の佐藤周一氏(45)、元会社員の大山宏氏(72)、医師の玉田憲勲氏(63)、NHK受信料を支払わない方法を教える党公認で党職員の山本貴平氏(46)が立候補している。(大久保貴裕、東郷隆)