消えた時間感覚、隣に現れた幻 当事者が語る「認知症」

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聞き手・中島鉄郎
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 昨日と5日前の区別がつかない。近所の道なのに急にわからなくなる。50歳で「レビー小体型認知症」との診断を受けた樋口直美さんは、自分の認知機能の変調を自ら観察し、執筆や講演を通じて世の中に伝えている。当事者自らが表現する心理や症状には、医学の診断とは異なる姿が見えてくる。

 ――50歳で「レビー小体型認知症」と診断されるまで、どういった経過をたどったのですか。

 「39歳のとき、マンションの駐車場に夜、車を止めると、右隣の車の助手席に女性が座っていました。本物の人に見えるのに、驚くと一瞬で消えた。それが繰り返し起こりました。最初の異変です。幻視という症状でした」

 ――病院へ行きましたか。

 「いいえ。健康でしたし、目の錯覚と思っていました。その後倦怠(けんたい)感など体調不良が始まり、幾つかの診療科で検査しましたが『異常なし』。不眠で受診した精神科で、予想外のうつ病と診断されたのは2004年、41歳でした」

 「ところが抗うつ剤を飲み始めて体調が急激に悪化し、教育関係の仕事も続けられず退職しました。脳と体を乗っ取られたようでした。副作用に長年苦しんだ後、同じ病院の7人目の担当医が初めて薬をやめるのに同意し、回復しました。やっと治ったと喜んだとき、47歳になっていました」

 ――その時点では「レビー小体型」と診断されてはいません。

 「翌年、物が人に見えたりしたのでいろいろ調べ、レビー小体型を疑いました。診断した専門医からは、『車の中の人』はこの病気の典型的な幻視と言われました」

認知症のうち、アルツハイマー型に次いで多いとされる「レビー小体型認知症」。どのような症状が表れるのでしょうか。樋口さんが詳しく語ってくれました。

 ――幻視が「症状」だと知ら…

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