「譲歩と尊重」共同生活で学んだ 飛騨職人学舎

山下周平
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 創業100年の家具メーカー「飛驒産業」(岐阜県高山市)の職人養成機関「飛驒職人学舎」。若者が2年間、共同生活をしながら職人の腕を磨く。

 「譲歩と尊重」。昨年入学した東京都出身の稲原匠(しょう)さん(20)がこの1年で学んだことだ。

 大学受験で第1志望に受からなかった。どうしようかと考え、興味のあったものづくりの道を目指し、学舎への入学を決めた。

 朝6時半過ぎには寮を一番に出る。夜も道具を研ぐなど最後まで残るストイックな日々を送った。稲原さんは「入学するまで1年遊んだからもう良いだろって言い聞かせている」と笑う。

 1年目の集大成となる課題制作は銭湯などで見かける木の札でできたかぎ付きの本棚をつくった。学舎はスマホ禁止。仕組みを簡単に知ることのできない生活のため、実際に銭湯に行って観察し、オリジナルのかぎを試行錯誤した。木材に複雑な溝を施し、材と材をつなぎ合わせる加工技術「仕口(しくち)」にもこだわった。

 一途に木工に取り組む稲原さんは入学当初、仲間とよくぶつかった。仲間の課題に取り組む姿勢などが甘いと感じると「ここで学ぶ意味がない」などと言ってけんかになった。でも衝突を繰り返す中で「意見しないことも選択だ」と考えるようになり、共同生活の中では譲ることも大切だと学んだ。

 同級生も協調性を学んだと口をそろえる。山形県出身の本間嵯菜さん(19)もつらいことがあった際は、これまでは家族に聞いてもらっていた。今はすぐに連絡ができないので、真っ暗な帰り道に自問自答することで、心を整理することを覚えたという。

 学舎は技術だけでなく人間性を磨くことを目指す。岡田贊三(さんぞう)社長は「真剣に打ち込む若い学生たちは先輩社員に刺激を与え、新たな価値を生みだす存在になっている。設立して良かった」と自信を深める。

 稲原さんは4月から機械による加工を学んでいる。「やりたいことがいっぱいある。一から十までこなせる匠になります」

=おわり(山下周平)