香港TV番組制作者に罰金 デモ調査報道取材で「違法」

広州=奥寺淳
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 香港の裁判所は22日、2019年の逃亡犯条例改正案に反対するデモに関して、警察に批判的なドキュメンタリー番組を製作した公共放送局のプロデューサーに対して、取材過程で道路交通条例違反があったとして6千香港ドル(約8万3千円)の罰金刑を科した。この番組は香港の「報道の自由賞」を受賞したが、放送局は賞を受け取らないと表明しており、当局からの圧力の影響だと批判が出ている。

 有罪となったのは、公共放送局「香港電台(RTHK)」の蔡玉玲氏。蔡氏らは、19年7月21日に香港新界地区元朗で起きたデモ参加者への襲撃事件を問う番組「721の真相は」を製作。デモ参加者をこん棒などで乱打して負傷させた身元不明の白シャツ集団が、警察当局者とみられる人物と事前に接触した疑いについて調査報道で伝えた。

 蔡氏は取材過程で、昨年5月と6月の計2回、取材で入手した映像に映っていた車の所有者の情報を陸運当局に照会した際、申請目的を「その他の交通や運輸案件に関する目的」の項目を選び、偽ったとして昨年11月に逮捕された。

 香港メディアによると、香港ではこれまで取材目的で同様の手法をとっても逮捕されることはなかった。香港記者協会などは、蔡氏の逮捕について、昨年6月末に中国共産党主導で香港国家安全維持法国安法)が施行され、反政府的な言動を取り締まる動きが強まっていることが背景にあるとして、言論の自由が重大に侵害されていると非難している。

 「721の真相は」は今月21日、香港で権威がある2021年の「報道の自由賞」を受賞。自由な報道の空間が狭まるなか、専門的な調査を通じて真実に迫ろうとし、公共の利益にも貢献したなどと評価された。しかし香港メディアによると、香港電台は作品の応募を認めていなかったとして、賞は受け取らないという。記者協会は、公共放送局への当局からの圧力が強まっていることが背景にあると批判している。(広州=奥寺淳