熊本・宇土市役所、災害に強い新庁舎へ着工 地震で損壊

棚橋咲月
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 熊本地震から5年となった今月、激しい揺れで大きく損壊した熊本県宇土市役所の新庁舎建設工事が始まった。地震のすさまじさを物語る庁舎は解体され、同じ土地に災害に強い庁舎として再建される。約49億円を投じ、2年後の完成をめざす。

 被災した庁舎は当時築51年。2003年の耐震診断で、震度6強の地震で大きな被害を受ける可能性が高いとされた。東日本大震災で自治体庁舎が壊滅的な被害に遭ったことから、建て替えの検討に乗り出した。

 新庁舎に求めることを尋ねる市民アンケートを発送した16年4月14日の夜、前震は起きた。16日には震度6強を観測。柱が折れ、5階建て庁舎の4階部分がつぶれた。「まさかと思った」。企画課の新庁舎建設担当者は振り返る。

 倒壊の恐れがあったため、庁舎は立ち入りができなくなった。内部に残った重要書類を回収するため、8月にはクレーンの先に磁石をつけて書類棚ごと引き出した。プレハブの仮設庁舎での業務が始まった。

 市民416人から回収したアンケートでは、7割が市庁舎に防災拠点としての役割を望んでいた。自家発電機や貯水槽を備え、少なくとも3日は業務が続けられる態勢を確保する。

 地震の経験を忘れないよう、庁舎の一角には当時の写真などを展示する。被害を伝える展示品を探しているが、今あるのは解体した庁舎の鉄筋で業者が記念に作った文鎮くらいという。

 担当者は「復旧を急ピッチで進めてきて、ようやく被災経験の継承を考えることができるようになった。市全体で防災の機運をつくりたい」と話す。

 熊本県によると、宇土市のほか、地震で庁舎が損壊し建て替えの方針が決まった7市町のうち、工事完了が2市町、工事中が4市町。最後まで残った益城町は今年度工事に入る。(棚橋咲月)