津波被災地から480キロ 冬の旅を経てバラは根付いた

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中川史
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 東日本大震災で、大津波が襲った宮城県名取市の住宅にあった1株のバラ。震災遺構として残されていた家が復興計画の進展で撤去されることになり、この株は愛知県豊田市に運ばれ、根付いた。まだ緑色のつぼみが2輪、茂る葉に隠れて咲く日を待っている。

 今年2月下旬、豊田市本新町5丁目の光岡保之さん(76)、幸子さん(74)夫妻の元に1株のバラが届いた。品種はストロベリーアイス。自宅敷地内の「YASAローズガーデン」に植えられた。

 直線距離で480キロの冬場の旅に「弱っていて、根付かないかと心配しました」と幸子さん。保之さんは「棒きれのような状態でしたが養生をしたおかげ。もちろん、間違いなく咲きます」と話す。

 光岡さん夫妻がこのバラと出会ったのは、東日本大震災から3年後の2014年だ。愛知万博(05年)をきっかけにNPO法人「グリーングラスロッツ」を立ち上げた夫妻は、海外の砂漠での植樹活動のほか、被災した名取市でクロマツの海岸林再生に取り組んでいた。

 そのボランティアの一行30人ほどが震災遺構の見学でバス1台に乗り、住む人のいなくなった名取市海岸林再生の会会長の鈴木英二さん(80)の自宅を見学に訪れた。

 鈴木さんがこの家を建てたのは1986年。震災で津波に襲われ、1階は水没した。周辺の家々は流されたが、太い柱を使い、骨組みがしっかりしていたため、2階や瓦屋根は原形のまま、1軒だけポツンと残った。

 津波の怖さを語る鈴木さんの説明を聞き終えたところで、玄関脇の雑草の中に、濃淡のピンクの花が咲いているのを幸子さんが見つけた。鈴木さんの亡き母が玄関脇に植えたものだった。

 「ああ、これはストロベリーアイスよ」

 花の名を幸子さんに教わり…

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