江戸時代の日本酒、どんな味?箱から指南書、驚いた社長

成田認
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 江戸時代日本酒はどんな味だったのか。岩手県洋野町の旧家で見つかった醸造法を記した資料をもとに、その味に近づけようと、酒造会社「南部美人」(二戸市)が仕込みを始めた。6月ごろには完成し、当時造られていたのと同じ「国光正宗」の名前を冠して売り出す予定だ。

 資料が見つかったのは、洋野町大野で酒の小売りや燃料の販売を手がける西大野商店の土蔵から。代々名主を務めた旧家で、広大な山林や田畑を持ち、この地域のほとんどの産業と関わりを持っていた。1843年に建てられた記録がある土蔵では、江戸末期から戦中にかけ、酒の製造・販売をしていたという。

 当時の酒の再現は、商店が実家で、近くに住む布施かおりさん(57)が一昨年1月に思いついた。歴史ある土蔵を残すとともに、「酒を造っていたから蔵には酵母がいるはず。もう一度酒を造れないか」と考えたのだ。

 造り方を調べていたところ、布施さんの母、晴山貞子さん(80)がその年の11月、母屋に移してあった箱の中から2種類の資料を発見。「醸造法ノ開陳秘傳(ひでん)」「酒類醸造方法書」と記されており、南部杜氏(とうじ)が江戸時代の醸造法を書いたものであることが分かった。

 布施さんは知人を介し、南部美人の久慈浩介社長(48)に協力を求めた。「これほど詳しく書いてある指南書を見たことがない」と久慈社長が驚くほどの内容で、昨年1月に「南部藩・復刻酒プロジェクト」が始動した。

 仕込みは今月7日朝、二戸市にある南部美人の蔵で始まった。酒米は明治時代から使われている「亀の尾」を使用。江戸時代の製法に近づけるため米は1割ほどしか削らず、仕込みに使う水は資料に従い、現在より4割ほど少なくした。

 「個性的なお酒になる可能性が高い」と期待を寄せる久慈社長。布施さんは「空想が現実になり、わくわくしている」と語る。

 酒は6月ごろ、4合瓶(720ミリリットル)で800本程度できる見通し。「国光正宗」の名前で西大野商店と南部美人で販売する予定だ。

 さらに夢は膨らんでおり、布施さんと久慈社長は2年後をめどに、岩手や青森で江戸時代に栽培されていたのと同じ米を原料に、西大野商店の井戸水や蔵付き酵母を使って、より当時に近い酒を造る計画も進めている。(成田認)