地元産ライ麦でフィンランドの装飾 都城の元演歌歌手

神谷裕司
[PR]

 宮崎県都城市乙房町にアトリエと貸しスペース「そらの音(ね)」を構え、北欧のフィンランドの伝統装飾「ヒンメリ」を作っている徳留ひと美さん(59)。

 麦わらで多面体を構成し、天井などからつるすもので、「光のモビール」とも呼ばれる。フィンランドでは古くから太陽神の誕生祭や農耕神への収穫祭などで使われてきたという。

 「日本で言えば、しめ縄のようなもの。向こうはライ麦パンが主食で、そのライ麦のわらから作るわけです。悪いものをよけて幸運を招くようにと、家々に飾られているそうです」

 2016年1月、たまたまテレビで、プラスチックのストローで作るヒンメリを目にした。平面でストローをつないでいき、それが立体に立ち上がる瞬間に大きく心が揺さぶられたという。「自分でも作りたい」と強く思い、作り方が載せてある1冊の本を見つけて「一生懸命、独学した」。

 北海道遠軽(えんがる)町がヒンメリ製作を地域おこしにつなげていることを知り、そこから小麦のわらを取り寄せて作るようになった。

 17年夏、フィンランドのヒンメリ作家、エイヤ・コスキさんが遠軽町を訪れた際、2日間、手ほどきを受けた。彼女の大きな作品を見て衝撃を受けた。「静かな宇宙空間。そこにいるだけで安らげた」。ヒンメリには「天」という意味があるという。

 さらに「自分のやり方でいいのだろうか」と相談すると、「ヒンメリは、こうでないといけないということはない」と言われ、その“自由さ”が心に染みた。

 同じ頃、宮崎市内でライ麦を作っている農家と知り合った。18年からはその麦わらを使っている。10日ほど乾燥させ、外側をむき、水で洗い、熱湯消毒をして作り始める。幅70センチ程度の大きなものだと3週間ほどかかるという。

 これまで1千人以上にヒンメリの作り方を教えた。各地に出向いたり、頼まれて「そらの音」で教えたり。「ヒンメリはあきらめない限り失敗はない」と伝えている。注文を受けて製作販売もしている。

 都城出身。高校時代、東京の芸能プロダクションのオーディションに合格し、19歳で「若杉ひと美」の芸名で演歌歌手としてデビュー。22歳まで歌手を続け、その後は都城に戻り、3人の娘を育てながらカフェレストランや歌謡教室を営んだ。

 19年11月、ヒンメリを多数飾った「そらの音」(070・8336・0825)を開いた。貸しスペースとしてはミーティングや料理教室などで使われているという。

 「ヒンメリが好きで好きでたまらない。その気持ちがあふれて周囲に伝わっているのではと思う。昔は目標を持って、こつこつとやったが、今は目標を持たなくてもいいのかな」(神谷裕司)