聖火リレー、2日間の日程終了 県内全市町村駆ける

中島健 中沢絢乃 寿柳聡 加藤勝利
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 【大分】県内全市町村をめぐる東京五輪聖火リレーは24日、2日間の日程を終えた。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当日になって大分市のルートが変更された。指原莉乃さんや石丸謙二郎さんらが走り、到着式の会場となった大分市の祝祭の広場には、周囲を高さ3メートルの幕で囲う密集対策がとられた。

 2日目のスタートは玖珠町。第1走者の県立玖珠美山高1年の梶原友唯(ゆい)さん(15)が、朝日を浴びながら区間を走り抜けた。「登下校で通るいつもの道がまったく違って輝いていた」。

 梶原さんからトーチを受けたのは消防士の梅木将馬さん(22)。沿道の両親や姉らの応援を受けて走った。梅木さんは、仕事で発熱患者を救急車で運ぶかどうかの判断を迫られることもあるという。「医療従事者を応援する思いを込めてトーチを運びました」。玖珠町では6人がトーチをつなぎ、計1・2キロを走った。(加藤勝利)

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 九重町では、絶景の九重“夢”大吊橋(つりばし)の上で聖火が引き継がれた。

 橋は2006年に完成し、橋桁は地上から173メートル。橋のたもとで聖火を受け継いだ谷川真奈美さん(56)は、「無観客」のため、中継のカメラに向かって橋の魅力を説明しながら進んだという。

 NPO法人「地域ひとネット」の代表理事で、普段は10人対10人で楽しむ囲碁などを通して、コミュニケーション力の向上を指導している。橋の上のリレーは不安もあったが、聖火をつながなければとトーチを両手で持って橋を歩いた。「夢のつくこの場所を、感染が広がる中でもリレーできることが希望につながる」と話した。

 橋の上で聖火をつないだ石井幸美さん(45)は、玖珠町で教員をしながらアテネ、北京、ロンドン五輪の女子ホッケー代表を務めた。

 選手時代に支えてくれた周囲への感謝と、子供たちに夢や目標を持つ大切さ、コロナ禍や豪雨の被害を一緒に乗り越えようという思いを伝えたいと臨んだ。五輪・パラリンピック開催について、「頑張っている人が力を出せる場をリレーをつなげることで確保してあげられたら。選手だけでは成り立たないので、日本の皆さんが気持ちを合わせていただけるとありがたい」と願った。(中島健)

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 大分県臼杵市では、国内に13ある古式泳法の一つ「臼杵山内流」の泳者・西水克己さん(66)が幅約60メートルの臼杵川をトーチを片手に立ち泳ぎで渡り、聖火を運んだ。流派の泳法を継承する臼杵山内流游泳(ゆうえい)クラブの仲間も旗や花笠を手にして近くを泳ぎ、聖火リレーをもり立てた。「200年の伝統がある山内流を少しでも多くの人に知ってほしい」

 右手にトーチを持って泳ぎながら、左手で観客に手を振る場面も。この日のために県立臼杵高校の書道部員が「つながれ日本」の旗を揮毫(きごう)。山内流の仲間が太鼓の音に合わせて、水面すれすれに大きく振り回す技も披露した。西水さんが岸辺に着き、トーチを高く掲げると、観客から大きな拍手が起きた。

 西水さんは小学5年の夏に山内流に出あい、高校1年から50年にわたって地元の海で子どもたちに泳ぎを教えてきた。「郷土の美しい臼杵川で仲間と技を披露できて幸せだった。この伝統を次世代につないでいきたい」。伝統継承への思いを込めて聖火をつないだ。(中沢絢乃)

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 豊後大野市では午後5時過ぎ、二宮八幡社(同市緒方町原尻)を第1走者が出発。観光名所「原尻の滝」真上の沈下橋の途中でトーチキスをし、第2走者の市立三重中学校2年の嶋末結心(ゆいね)さん(13)が橋の残りを走りきった。

 幼い頃から陸上競技と水泳を続けてきた嶋末さんは「体を動かすことが大好き。育ててくれたこの町で世界につながる聖火ランナーとして走り、名前の由来のように心を結んで大切な光をつなぎたい」と聖火ランナーに応募した。母の琴枝さん(40)は「新型コロナに感染して大役を果たせなくならないよう、2週間ほど前から習い事も休んだりして健康管理を頑張っていた。やっとこの日を迎えられました」と話した。(寿柳聡)

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 23日の到着地の日田市では、2017年の九州北部豪雨からの復興の思いをこめた「チーム日田」(代表・山崎世紀医師)の10人を含む20人がランナーを務めた。

 豪雨で父親を亡くした山本晃菜さん(16)は「自分が生まれ育った小野地区に元気になってほしい」と走った。ゴール後は、「天国のお父さんが、これからも頑張れと語りかけてくれていると感じました」。

 住宅などを失った伊藤元裕さん(69)は、コロナ禍で延期になった昨年以来、毎日3キロを走ったり歩いたりして鍛えた。「命以外の大切な物を失った家族を励ましてくれたのは、小野地区やボランティアの皆さん。きょうも背中を押して手を引っ張ってくれてうれしい限り」と話した。

 県内最高齢ランナー、99歳の後藤稔夫さん(日田祇園山鉾振興会長)は、到着式典で「無事に聖火を日田に届けられた。元気をいただいてありがとう」と聴衆に語りかけた。(加藤勝利)