かんきつ香る「みかん鯛」 愛媛の特産で魚臭さ除去

伊東邦昭
【動画】愛媛の養殖マダイ「みかん鯛」=伊東邦昭撮影
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 愛媛県の「県の魚」、マダイ。養殖マダイの生産は、2018年まで29年連続で日本一に輝く。県南部の宇和海一帯は、リアス式海岸が続いて海面が穏やかで、黒潮から分岐した温かい海水が流れ込んで養殖にうってつけの環境という。

 水産会社は、エサに工夫を凝らし、理想の味を求めている。その一つ、身からかんきつの香りが漂うのが「みかん鯛(だい)」だ。生産者の中田水産(宇和島市)にお邪魔した。

 エサに混ぜ込んでいるのは、イヨカンの皮をすり潰したものやイヨカンから抽出したオイル。出荷の3カ月前から少しずつ濃くして、香りをつけていく。社長の中田力夫さん(52)は「週1回味見して、香りがついたのを確認してから出荷しています」と話す。

 朝6時半。岸から数百メートル先のいけすに船を横付けにし、いけすに沈めた網を5人がかりで引き揚げる。すると、みかん鯛が水しぶきを上げながら跳ねた。

 1・5キロ以上の出荷サイズに育ったものを作業員が船にすくい上げると、素早くエラにナイフを刺して生け締めに。さらに鼻の穴からピアノ線を差し込み、脳天を経由して曲がった背骨に沿わせながら、神経を尾の方へ押し込んだ。神経を壊す「神経抜き」で、数秒で仕上げる。これをしないと体がけいれんすることがあり、筋肉が熱をもつという。手間はかかるが、中田さんは「神経締めをして動かなくしてから氷水につけると、早く芯まで冷えて鮮度を長く保てます」。

 かんきつとマダイ。愛媛の特産どうしの組み合わせの狙いは、魚特有の生臭さ対策だ。かんきつの皮に含まれるリモネンが生臭さを抑制し、抗酸化作用のあるポリフェノールが血合いの変色を遅らせて、新鮮さを長持ちさせるという。身から漂うほのかなかんきつの香りも、臭みの低減に一役買っている。「養殖物はおいしい、というイメージをもってもらいたいですね」

 松山市内でみかん鯛を食べられる居酒屋「喜楽家(きらくや)」の料理長、田中裕樹さん(45)は「調理場でおろしている時から、かんきつの香りがします」。刺し身、あぶり、湯引きの3種盛りをいただいた。

 刺し身を口に含むと、かんきつの香りがふわりと膨らみ、タイらしい味わいが広がった。皮が香ばしいあぶり、氷水で引き締めてうまみを閉じ込めた湯引きも、かんきつの香りがしっかり残っている。

 「みかん鯛は、火を入れることで香りが際立つ」と田中さん。店では、しゃぶしゃぶや煮付け、クリームコロッケなど、十数種類の料理を提供する。「どの料理もみかん鯛ならではの香りを生かしているので、食べ比べをして楽しんでもらえたら」(伊東邦昭)

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 喜楽家 みかん鯛をふんだんに使った「満喫!みかん鯛コース」(税込み3千円)のほか、炭火塩焼き、カルパッチョ、釜飯など単品メニューも。現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で休業中。再開時期が決まり次第、インスタグラム(アカウント名「kirakuya.matuyama」)で発表する。松山市二番町2の4の1。午後6時~午前0時、不定休。電話089・948・8397。