震災の記憶つなぐひまわりプロジェクト

荒海謙一
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 全国から届けられるヒマワリの種を県内で栽培する「福島ひまわり里親プロジェクト」。復興のシンボルにしようと、東日本大震災の直後から始まった活動は被災地と支援者を結び、絆を育んだ。震災から10年。風化が課題になる中、記憶をつなぐ新たな試みもスタートする。

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 プロジェクトは、県内の若手経営者らが設立した福島市のNPO法人「チームふくしま」が2011年5月から始めた。販売する種の購入者を里親とし、育ててもらったヒマワリの種を送り返してもらう。集まった種は県内の希望者に無償で配り、ヒマワリ畑を観光振興に役立てる。送る種のパッケージは、震災で仕事が激減した障害者の作業所に依頼、福島で採れた種の油はバスの燃料に使う。

 プロジェクトの参加者は全国で50万人を超え、5千校以上の学校などで栽培された。種は10粒で1グラムほど。これまでに集まった種は5トンを超える。プロジェクトをきっかけに学校同士の交流も生まれ、ヒマワリを見に来る県外からの子どもも増えた。

 メンバーたちは次を見据え、今年度から「ひまわり防災検定」を始める。「知る」「気づく」「行動する」と、3級から1級まで級ごとに目標があり、受検者は震災時の出来事や被災者の体験談、災害への備えなどの講座やワークショップを経て試験に挑む。

 受講・受検会場は3級は全国各地、2級は福島県、1級は福島、宮城、岩手の被災3県。6月に修学旅行で福島を訪れる兵庫県の高校生たちが最初に受検する予定で、講座内容などを精査して来年3月からの本格スタートを目指す。

 検定は記憶の風化に挑む試みでもある。「当時、幼かった子どもたちは震災を覚えていない。心配させまいと意図的に教えない親もいるだろう」。理事長の半田真仁さん(43)は、そう感じていた。検定の趣旨は次世代にきちんと伝え、どこでも災害が起こりうることを再認識してもらい、危機管理や防災教育などにもつなげることだ。

 活動は順調に見える。が、半田さんは「心が折れそうになったこともある」と明かす。旧ソ連チェルノブイリ原発事故後にヒマワリが植えられたことがあり、プロジェクトは原発事故で汚染された土地の除染効果も期待された。ところが開始から半年もたたないうちに、農水省は「ほとんど効果がない」という実験結果を公表。苦情の電話が殺到し、プロジェクトは中止か継続かの瀬戸際に追い込まれた。

 踏みとどまった理由の一つは、熱心にヒマワリを育てる里親の存在だった。「丹精を込めて育てし向日葵(ひまわり)に 子らの明日に幸あれと託す」。広島県の末期がんの男性から種とともに短歌が届いた。自らの命をヒマワリの成長に重ね、福島へのエールをつづっていた。半田さんたちは改めて命の種の重みを知り、続けていく覚悟を決めたという。「福島を同情の街から尊敬される街にしたい」。今はそんな思いに突き動かされている。

 県内在住者を対象にしたヒマワリの種の無償配布は7月末まで。申し込みはチームふくしま(024・563・7472)へ。(荒海謙一)