350年前の人形 鮮やかに復元 岐阜・ひんここ祭

松永佳伸
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 美濃市の大矢田神社に伝わる国選択無形民俗文化財「ひんここ祭」。素朴な人形劇で豊作を祈願する祭りで最も大切にされてきた猩々(しょうじょう)神人形1体の復元修理が終わった。復元前の人形は約350年前につくられたとみられ、傷みが激しかった。新しい人形はほぼ同じ材料を使っており、10月の例大祭で登場する予定だ。

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 地元の大矢田ひんここ祭保存会によると、祭りの起源は約500年以上前の室町時代までさかのぼるという。境内の急斜面に設けられた舞台で、農民を襲う大蛇を須佐之男命(すさのおのみこと)が退治するという人形劇で、五穀豊穣(ほうじょう)や訪れた人たちの安全を祈願する。

 猩々神人形は、須佐之男命の妻「櫛稲田姫」の化身とされ、ひんここ祭で最も重要なからくり人形だ。最上段の屋形にまつられ、体を左右に振って舞い、タイを釣りあげる。

 長年、風雨にさらされるなど老朽化していた。保存会では修理をしながら大切に使用してきたが、限界と判断し、昨年春、愛知県春日井市の祭礼人形師の2代目萬屋仁兵衛さん(57)の工房に復元修理を依頼した。

 元の人形は頭にキリ、胴体の軸や手にカシ、足にヒノキが使われていた。頭と手足には柿渋が塗られ、顔には発色がよくなるように水銀を含んだ顔料が施されていた。目は真鍮(しんちゅう)製で漆を塗って焼いてあることもわかった。

 本麻の髪の毛や胴に竹のかごを使うなど随所に古い人形の特徴があり、萬屋さんは元の人形は350年以上前の制作とみている。

 約1年かけて完成した人形は高さ約55センチ。手にサクラを使った以外は元の人形と同じ材料で復元した。萬屋さんは「この部類の人形は初めてで、構造も珍しい。歴史的にも価値が高く、大切に受け継いでいってほしい」と話す。元の人形も傷んだ箇所を補修し、保存されるという。

 人形は、滑車につけたひもで左右に回転させる「ろくろからくり」の仕組みが用いられている。新しい人形の動きなどを確認した保存会の渡辺兼雄会長(73)は「とてもきれいに仕上げていただきうれしい。秋の例大祭で盛大にお披露目をしたい」と話した。(松永佳伸)