水と油の核保有国が「敵に塩」 コロナ対策で融和の思惑

新型コロナウイルス

バンコク=乗京真知、ニューデリー=奈良部健
[PR]

 パキスタン外務省は24日夜、新型コロナウイルスの感染者が急増している隣国インドに対し、人工呼吸器や防護服などの支援を申し出たと発表した。係争地カシミールの領有をめぐる両国の対立は根深いが、コロナ対策で融和を演出し、将来の外交や貿易の正常化につなげる狙いがある。

 パキスタン外務省の発表に先立ち、同国のカーン首相は同日、ツイッターで「感染と闘うインドの人たちに連帯を示したい」と表明した。インドが受け入れを決めれば、パキスタンは国境検問所を通じて物資を送る予定だという。

 感染第2波に見舞われているインドでは、1日の新規感染者が約35万人に膨らみ、医療機器の不足が深刻だ。累積感染者は1700万人を超えて世界2番目。一方、パキスタンの累積感染者は約80万人で、人口比で見るとインドの約3分の1となっている。

 過去に3度戦争を起こし、核保有国となった両国の歩み寄りは珍しい。2019年2月にはインドがパキスタン領内を空爆し、報復でパキスタン軍機がインド軍機を撃ち落とす軍事衝突が起きた。

 また同年8月には係争地カシミールをめぐり、インド政府がインド側カシミールの自治権を剝奪(はくだつ)して実効支配を強化。両国は大使を呼び戻し、貿易を止めた。

 ところが、コロナが猛威を振るうなか両国経済が停滞。混乱の拡大を避けたい両国は今年2月、カシミールでの停戦順守で合意し、対話を再開した。3月にパキスタンのカーン首相がコロナに感染すると、インドのモディ首相がツイッターで「早い回復を」とお見舞いの言葉を贈った。延期続きの南アジア地域の首脳会合の再開に向けた交渉も始まった。

 ただ、対立の根っこにあるカシミール問題の解決は容易でない。過度な歩み寄りは国内で弱腰と受け止められ、政権の命取りになりかねない。パキスタン政府としては、費用がかさむ国境地帯の軍備を最小限に抑えつつ、外交や貿易の正常化を図ることで、コロナ収束と経済の立て直しを優先したい考えだ。

 一方、インドは国民感情の観点から、パキスタンからの支援を受け入れるかは不明だ。酸素や酸素濃縮器などの関税を免除するなど、外国からの支援受け入れのための対策を進めている。(バンコク=乗京真知、ニューデリー=奈良部健

新型コロナウイルス最新情報

新型コロナウイルス最新情報

最新ニュースや感染状況、地域別ニュース、予防方法などの生活情報はこちらから。[記事一覧へ]