菅首相が好む絆 「権力者がめざすものでない」蟻川教授

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聞き手 編集委員・豊秀一
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 コロナ禍で浮かんだ社会の姿は、「憲法」の視点からどう見えるのか。蟻川恒正・日大教授(憲法)に聞いた。

 コロナ禍で仕事や住居を失い、社会のセーフティーネットからこぼれ落ちる人が増えているという現実があります。その一方で、創業者が菅義偉首相と懇意だったという放送関連会社が、通信・放送行政を所管する総務省の官僚たちに接待を繰り返してきたという現実があります。

 関連のないように見える二つの「現実」が何を意味するのか、教えてくれる言葉があります。菅首相が好んで使う「めざす社会像は自助、共助、公助、そして絆」です。「自助」が自己責任を強調する「新自由主義」としてしばしば批判されますが、私は「絆」こそが問題だと考えます。

 「絆」は、「身内」にとっては心地よいこともあるけれども、「身内」の外の者には抑圧的に働きます。

 首相の長男までもが関わった先の違法接待も、安倍政権下の森友・加計学園問題も、権力者との「絆」から生まれたものでした。一方、権力者との間に「絆」を持たない人々は、日々、コロナ禍に苦しんでいます。

 「公共社会」とは、一人一人が等しく尊重されなければならないという考えの上に成り立つものです。「絆」は「公共」に責任を負う権力者が「めざす」べきものではありません。

 「公共」を支えるのは、憲法が掲げる個人の「人権」です。「人権」は権力者との距離とは無関係に、誰に対しても保障しなければならないものです。それは、身びいきを許さない厳しさを持つ、「絆」とは対極にある考え方です。

 「絆が大切」と言われるとなるほどと納得してしまいがちです。しかし、それを権力者が言い出すとき、立ち止まって考える必要があります。憲法を考えるとは、そういう作業でもあります。(聞き手 編集委員・豊秀一

    ◇

 憲法記念日の5月3日、憲法学者でつくる「全国憲法研究会」(代表・小沢隆一東京慈恵会医科大教授)による「憲法記念講演会」が、オンラインで開かれる。午後1時半~午後4時半で、参加費は無料。申し込みは同研究会のホームページに掲載されているURLまたはQRコードから行う。締め切りは4月26日。問い合わせは、聖学院大の石川裕一郎研究室(info@zenkokuken.orgメールする)。

 当日は、哲学者の柄谷行人氏が「憲法再考」、蟻川恒正・日大教授(憲法)が「『個人の尊厳』という逆接続」と題し、それぞれ講演する。

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