第2回「大人は敵」教官の胸ぐらつかむ少年 寄り添った先に

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編集委員・大久保真紀
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 「適当にやっておけばいいや」

 知人を殴るなどの傷害事件を起こした18歳の少年は、少年院に入った当初はそんな気持ちでいた。大人は敵。不信感しかなかった。

 茨城県牛久市にある少年院「茨城農芸学院」に入院してから約4カ月。少年は相変わらず、あいさつも適当で、声も出さずに生活していた。教官に注意されたことに腹を立ててノートをたたきつけ、集団寮から単独寮に移された。教官の指示に怒りを覚え、胸ぐらをつかんだときも単独寮での謹慎処分を言い渡された。

 それでも、自分は悪くないと思っていた。

 幼いころから、実父によく殴られた。水風呂に沈められたこともある。ブラシや掃除機でたたかれ、背中に青あざができることもしょっちゅうあった。義母も見て見ぬふりをして助けてくれなかった。

 中学生のとき、いじめに遭って担任に訴えたが取り合ってもらえなかった。実父に相談しても「ウソだろう」と相手にしてもらえない。自分のことを理解してくれず、勝手に物事を決めつける大人が嫌いになっていった。

 単独寮での謹慎中、なぜ自分が教官に暴力を振るったのかをひたすら考えさせられた。本を読み、作文を書かされた。課題をこなさないと、集団寮に戻ることはできない。でも、やる気がでない。

 それでも、寮の教官たちは代…

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