戦中戦後の一宮の暮らし 知多の森靖雄さんが出版 愛知

伊藤智章
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 愛知県知多市に住む日本福祉大元教授の森靖雄さん(85)が出身地の一宮市の戦災史「戦時下の一宮 くらしと空襲」(人間社)を出版した。教育勅語読み上げの後、緊張した生徒千人余が一斉に鼻をすすった、などと体験を交え、描写は細部にこだわっている。

 森さんは終戦時10歳。現在の一宮駅近くの商店街で台所用品など日用雑貨を扱う店の次男だった。1945年7月の空襲の夜は火の手が迫る中、母や弟と逃げた。「すごい人波で時々手がちぎれるほど引っ張られ」た記憶は鮮明だ。

 お菓子も配給制になり、子どもは甘みに飢え、自身もキャラメルは1日2粒に自主規制した。店頭から金属製品が減り、竹製の柄の先端にアコヤ貝の貝殻を付けた観光みやげのような貝じゃくし、陶磁器製水筒や紙製洗面器、木製バケツなどの代用品が並んだ。

 こうした自身の記憶に、母らの体験記、市長らの回顧録、学校史や市史など約100冊の資料をもとに、庶民の暮らしを再現した。国民学校の「無期休校」は45年5月からか6月か、市街地を焼き払った大空襲は7月27日夜か28日夜かといった記憶と資料が合致しない部分は両方を書いた。

 森さんは産業史が専門だが、近年、体験世代が減る一方、「戦争は勝てばいい」「なめられるな」と歴史や社会を単純化して語る風潮が気になっている。「戦争は戦場だけではないし、本土の体験も空襲だけでもない。気付くと食べものが無くなり、ものも言えなくなっている。当時の雰囲気を感じ取ってほしい」と話す。295ページ、税込み1650円。(伊藤智章)