「バーンされた」ほおに傷 障害児への虐待、元職員証言

鷲田智憲
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 山形県新庄市の障害児入所施設「県立最上学園」であった虐待事案について、県知的障害者福祉協会など県内の12団体が26日、山形県に調査の聞き取り内容の公表などを求める要望書を提出した。

 虐待事案は2月に県障がい福祉課が公表した。2019年度から20年度にかけて2人の男性保育士が5人の児童生徒に対し背中をたたいたり、暴言を浴びせたりしたとして、県が身体的、心理的な虐待があったと認定した。現在、男性保育士2人は支援業務から外れている。

 同協会は独自に学園の職員らから聞き取った内容と比べ、県が虐待と認定し、公表した内容が限定的だと指摘。第三者委員会を設置し、具体的な再発防止策や加害職員の処分内容の公表なども求めた。

 要望書を受け取った渡辺丈洋・県健康福祉部長は「重く受け止めている。県議会でも指摘があり、さっそく、第三者委員会の組織を立ち上げていきたい」と話した。同協会の井上博会長は「民間であれば速やかに職員の処分も出るが、スピード感がない。利用者の権利を守る視点に立って、早急に対応してほしい」と話した。

事情聴いた上司「物証がないから」

 最上学園の元職員が朝日新聞の取材に応じた。2月に公表された虐待事案以外にも「ひどい行為はあった」と話し、県の調査のあり方に疑問を投げかけた。

 元職員は昨年7月下旬、入所していた男子生徒の両ほおに大きなあざが残る不審な傷があるのを現認した。生徒は男性の職員名をあげて「バーンとされた」と話したという。

 上司が2人の男性職員に事情を聴いた際、2人は「疑うのか」「知らない」などと話した。上司は「物証がないから立証できない」と言ったという。

 元職員はこの事案について、県の聞き取り調査で話したが、虐待とは認定されず、発表もされなかった。元職員によると、ホールディング(行動制限)と称して胸ぐらをつかんだり、倒れている入所者を床に押さえつけたりする場面もあったという。

 元職員は「外から見えないことが、虐待事案が発生してしまう原因ではないか。外の空気を入れて、この異質さに気づいてほしい」と話す。

「県として認定には至らなかった」

 一方、元職員らが指摘した事案について、県障がい福祉課は「聞き取り段階で話は出ていたが、県として虐待事案の認定には至らなかった」と説明した。

 同課と子ども家庭課、児童相談所の3者が昨年9月から11月にかけて学園職員や児童生徒から聞き取りを実施。いつどこで行われた行為か、加害職員の認否、複数職員の証言などを認定基準にしたという。

 顔のあざについては目撃者がなく、加害行為を疑われた職員は否定したという。また被害生徒の証言について障がい福祉課は「知的障害のある子どもで、証言が本当のことか確証できなかった」とした。

 調査について同課は「あざとなれば(刑法の)傷害罪が疑われる。(疑われている)職員の人生にも関わるので慎重を期したが、できる限りの調査は行った」と話した。(鷲田智憲)