長崎港が見守ったまちの物語 原爆など激動の450年

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安斎耕一
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 長崎港はいにしえから海外に開かれた窓口として多くの人々や文化を迎え、豊かな歴史を紡いできた。今年はポルトガルの貿易船が来航した1571年から450年。長崎県長崎市などが27日、開港450周年記念式典を開いたが、新型コロナ禍で無観客となった。それでも地元ではこの機会に、港とともに歩んできたまちの歴史に光を当て、魅力を発信する試みが進む。

 すり鉢状の地形が独特の景観を生み出している長崎市。港を囲む山々の斜面に市街地が広がっている。異国情緒を残す一方、キリスト教弾圧と殉教、原爆投下などの悲劇も歴史に刻まれている。

 長崎港に面する長崎県美術館では「長崎港をめぐる物語」展が6月13日まで開催中。アートを通じて港の魅力を改めて知ることができる。明治期~現代の長崎港をモチーフにした絵画23点を展示。風光明媚(ふうこうめいび)な情景に魅了された野口彌太郎(1899~1976)や山下清(1922~71)ら多くの芸術家がそれぞれのタッチで描いている。

 戦前は重要な軍事拠点、戦後は異国情緒豊かな名勝地と、港の役割やイメージは移り変わってきたが、並ぶ絵画からは、港や海が常に身近な存在として愛されてきたことがうかがえる。「港あっての長崎、と改めて気づかされました」と美術館の担当者は話す。

 450年の歴史をたどることができる書籍として、開港記念日の27日に「ながさき開港450年めぐり」(長崎文献社、1650円)が刊行された。450年を五つの時代に分けて史跡を巡るまち歩きガイドになっている。著者でライターの下妻みどりさん(50)は「いろんな時代のものが凝縮されているのが長崎のまち。年代順に追って歴史を解きほぐしたかった」。

 この書籍を彩るのは長崎の版画家・田川憲(けん)(1906~67)の濃密な版画作品だ。県美術館の企画展でも作品が紹介されている田川は、変わりゆくふるさとを版木に彫ってきた。例えば、原爆で焼失した唐寺(とうでら)の福済寺も、田川が往年の姿を作品に残している。「現在の光景と重ね合わせ、かつてのまちを想像し、違いを知るのも楽しい。まちの物語を歩いて探してほしい」と下妻さんは話す。

 まちをぶらぶら歩くことを長崎弁で「さるく」と言う。まち歩きの達人「ヒロスケ」として地元で活躍している山口広助さん(51)は、450周年記念事業の一環で「開港さるく」というまち歩きの特別コースを考案した。今月下旬、事前に申し込んだ人々と長崎市役所から開港6町ゆかりの地を歩く。「普段通る場所にもまちの歴史は染みこんでいる。450年前のまちを想像しながら歩けば、知られざる魅力に出会えるはずです」

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