87歳田原総一朗の朝ごはん「バターは厚く」は妻の遺言
都心の高層マンションの一室。朝食の準備は、積み上げた新聞や資料の谷間にお盆を置くことから始める。16畳ほどのリビング兼書斎がジャーナリスト、田原総一朗(87)の朝食の場所だ。あふれた皿は、本の上に載せることになる。
やかんで紅茶の湯を沸かしながら、目玉焼きを作り、冷凍しておいた食パン1枚をトースターに入れたら、レタスを手でちぎる。グラスを三つ並べて牛乳、リンゴジュース、冷たい茶を注ぐ。
台所と書斎を往復しながらお盆にすべてのメニューがそろう頃、「チン」とトースターが鳴る。
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30年間ほぼ同じ。いつもの食器に、いつものメニュー。考えなくても体が動く。
「僕は、食べたいものはほとんどない。元気に仕事がしたいから食べる。それだけ」。唯一、好きなのはあんこで、あんパンはよく食べるのだという。
趣味もない。好奇心はすべて仕事に注いできた。トーストを黙々と口へ運びながら、その日の仕事の段取りを考える。食後は、社説などを読み比べながら1時間ほどかけて新聞6紙に目を通す。30分のウォーキングに出かけるのも、足腰を強くして、仕事を長く続けたい思いがあるからだ。
2人の妻を病気で亡くしている。「2004年に逝った妻とは、一緒に朝食の準備をしていた。今のメニューはその時からで、台所に一緒に立つうちに僕が覚えたんでしょう」。本格的な料理はしたことがないし、包丁も使わない。朝も包丁を使わなくていいメニューが残ったという。
胃腸が弱くあぶらっぽいもの…