異例の「二刀流」ラグビー現役選手が審判を兼ねる理由

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野村周平
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 プレーヤーとレフェリーの「二刀流」を実践するラグビー選手がいる。

 トップリーグ(TL)・トヨタ自動車のスクラムハーフ(SH)滑川剛人(31)。

 審判との掛け持ちでプレーの質が向上し、プレーオフのベスト8に進んだチームに不可欠な存在となっている。

 そもそも、なぜ、滑川は現役選手でありながら審判になったのか。

 滑川の抜擢(ばってき)は、世界レベルの審判を育てる日本ラグビー協会のタレント発掘事業「TID」プログラムの一環だった。日本協会技術部門の原田隆司レフェリーマネジャーは、背景に「世界のレフェリーの潮流」があると話す。

 その一つが若手の育成。たとえば、2019年のワールドカップ(W杯)日本大会の主審12人の一人に選ばれたニュージーランドのベン・オキーフは当時30歳だった。イングランドのルーク・ピアースは当時31歳。いずれも10代の頃から将来の有望株として各協会に育てられ、日本大会でW杯の主審にデビューした。

 もう一つが、トップレベルの選手経験者の登用だ。

 象徴は日本大会で笛を吹き、滑川が理想に掲げる豪州のニック・ベリー。滑川と同じSH。南半球最高峰リーグのスーパーラグビーや欧州のプロクラブでのプレー経験を持つ。

 脳振盪(しんとう)の影響で引退して審判に転じると、数年でトップレフェリーの仲間入りを果たした。

下部リーグの審判で「一番うまい」

 「この二つの流れが日本にも必要」。そう考えた原田さんは人材の発掘を始めた。「選手経験枠」でトヨタのスタッフから推薦されたのが滑川だった。

 神奈川・桐蔭学園高から帝京大、トヨタへ。「トップレベルの環境で育ち、日本一の経験もある彼が審判で成功すればすごいことだと思った」。原田さんは興奮気味に振り返る。

 「僕は選手」

 滑川は当初、乗り気ではなか…

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