広島再選挙、「挙党態勢」敷いた公明 手痛い敗北 

衆参3選挙

太田成美
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 25日に投開票された参院広島選挙区再選挙では、自民党候補に推薦を出した公明党が、自民をしのぐ熱量で挑んだ。異例の「挙党態勢」を敷いた裏には、次期衆院選をにらんだ公明の思惑があった。が、結果は敗北。今後に課題を残すことになった。

 「政治とカネの問題で、投票に嫌気がさして行かなかったという人が多いことは否定できない事実だ。与党として体制を立て直して参りたい」。公明の山口那津男代表は27日の記者会見で、広島の敗北の要因について、33・61%という低投票率も挙げて語った。

 広島再選挙は、2019年参院選広島選挙区をめぐり公職選挙法違反(買収)の有罪判決が確定した河井案里氏=自民を離党=の当選無効にともなうものだ。広島は、自民の支持基盤が強い「保守王国」とされ、当初は自民内で「勝って当然」との楽観論もあった。しかし、「政治とカネ」の問題の逆風は予想以上に強く、一部報道機関や党独自の情勢調査では序盤から劣勢が伝えられた。

 この選挙戦で、公明は告示直後から山口氏や石井啓一幹事長らが相次いで広島入り。さらに告示前には支持母体・創価学会の原田稔会長も広島で集会を開くほどの力の入れようだった。

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自民党の岸田文雄前政調会長(左)と結束をアピールする公明党の山口那津男代表=2021年4月11日、広島市南区

 15日の党中央幹事会では、石井氏が「国会議員は現地にできるだけ行っていただきたい」と指示。それまでは中国地方の国会議員らを中心に対応していたが、全国から人員を投入する異例の対応に切り替え、ネジを巻いた。19日には石井氏が再び広島に入り、「緊急決起集会」を開催。中国地方の地方議員約150人が集結し、集会後に県内各地に散って関係先を回り、支援を求める「ローラー作戦」を展開した。最終盤には学会が全国の会員に「電話作戦」を呼びかけ、てこ入れを図った。

 公明がここまで熱を入れたのは、次期衆院選をめぐる広島の事情がある。

 公明は昨年11月、次期衆院選の広島3区に斉藤鉄夫副代表(比例中国ブロック)の公認を決定。ただ同区は、案里氏の夫で、買収事件で公選法違反の罪に問われている克行被告=自民を離党=の選挙区だったため、選挙区を奪われる形となった自民県連との対立を生んだ。

 今回の再選挙で公明は、自民候補を全力で支援する姿勢を見せることで、県連との関係改善を狙った。衆院選の広島3区で勝利するためには、自民の協力が欠かせないからだ。山口氏は広島での街頭演説後、記者団に「この再選挙も(自公で)力を合わせて勝利することが、次の流れにつながる」と強調した。

 公明や学会がフル稼働した選挙戦だったが、結果は野党が一本化した諸派新顔に敗北。19年参院選で公明が案里氏を支援した経緯から、「支持者には『なんでまた自民党を』という声もあった」(公明幹部)と支持拡大の難しさもあった。それでも、朝日新聞社の出口調査では、公明支持層では81%が自民候補に投票した。

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選挙結果を受け、記者団の取材に応じる公明党の石井啓一幹事長=2021年4月25日、東京都新宿区

 敗北が決まった25日夜、自民県連会長の岸田文雄政調会長は、「公明党の皆様方に、かつて感じたこともない温かい、力強い応援、ご支援をいただいた」と述べた。公明幹部のもとには、自民幹部から「広島3区は頑張らせてもらうから」と電話もあった。

 広島の自公の関係改善には一定の成果があったものの、広島での結果は、「政治とカネ」の問題に対する菅政権への根強い不信感と、与党の基盤のもろさを浮き彫りにした。今後も新型コロナの対応次第では、さらに与党に逆風が吹きかねない。公明幹部は「広島3区も難しい戦いになるだろう」と漏らす。(太田成美)