第1回「これは負けたな」不安が確信に 保守王国、動かぬ組織

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大久保貴裕
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乱流 保守王国
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 河井案里氏の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙は25日に投開票され、野党系候補が自民候補らを破って幕を閉じた。いずれも自民を離党した案里氏や夫で元法相の克行被告による買収事件に端を発し、「政治とカネ」への不信がうねりとなった今回の選挙。保守王国・広島で起こった「乱流」のワケを各党の動きから探る。

 投開票が2日後に迫る最終盤。自民党のある国会議員は、思わず目を疑った。

 訪問した広島市内の中小企業の玄関に、手つかずのまま放置された自民候補のチラシの束。とっくに従業員やその家族、取引先などに配られた、と見込んでいたものだった。

 「1枚も配っていないのか……」

 素知らぬ顔で応対する経営者を前に口には出せなかったが、選挙戦を通じてこの議員が抱いていた不安は、確信へと変わった。

 「これは負けたな」

 自民候補の総得票数は2019年参院選から4割超減り、さらに朝日新聞の出口調査では自民支持層の2割が野党系候補に投票した。背景にあるのは自民の集票を長らく、強力に下支えしてきた中小企業や業界団体などの支持基盤をも深く蝕(むしば)んだ不信感だった。

 組織戦に希望を託していた自民にとって想定外。買収事件による逆風で無党派層の集票は難しくても、池田勇人元首相の時代から半世紀にわたって培った「分厚い保守層」の心は戻ってくるとみていたからだ。しかし、それもこの17日間の戦いで「幻想だった」(党幹部)と気付かされる。

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再選挙の出陣式で気勢を上げる自民候補(中央)と、自民・公明両党の国会議員ら=2021年4月8日午前9時48分、広島市中区、上田潤撮影

 農業、水産業、エネルギー、医療……。支持固めの実動は全国の族議員たちが担った。あらゆる業界で、影響力を持つ有力議員が東京からひっきりなしにやって来ては頭を下げた。

 ただ、「手応えを感じた」という族議員が満足げに帰京した途端、地元有力企業の幹部は陰でこう漏らしていた。

 「何人に頼まれても、今回は票をまとめることは不可能だ」

「運動の穴 多すぎる」

 「管理職だけでもいい。なんとか票をまとめてもらえないか」

25日に投開票された参院広島選挙区の再選挙では、37万票を獲得した野党系で諸派新顔の宮口治子氏(45)が、自民新顔の西田(にした)英範氏(39)を3万3千票差で破り、初当選を果たした。投票率は33・61%で、2019年参院選の44・67%を大きく下回った。

 広島県内に拠点を持つ上場企…

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