海外から「すごい!」 粘土→陶器のメイキング映像発信

黄澈
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 三重県四日市市陶芸家熊本栄司さん(58)が、自身の作品づくりの工程を収めた映像の発信に取り組んでいる。一塊の粘土が、きらびやかな陶器に仕上がるまでの全過程を追えるメイキング映像は海外からの関心も高く、四日市市の萬古焼の魅力を世界発信することにも一役買っている。

 熊本さんは大学卒業後、22歳で、父の窯元を手伝うようになった。規格化された「商品」を造ることに飽き足らず、自分だけの作品づくりに取り組み、数々の公募展で入選。金を大胆に使うなど、独特の作風を持つ陶芸家として、地位を確立した。

 三十数年で身につけてきた大切な技法の数々。だが、それを映像の形で一般公開することに、ためらいはなかった。「2人の子どもは社会人として、それぞれの道に進んだ。技法を自分の中に抱え込んでしまったら、伝承してくれる人が絶えてしまう」。そんな思いが勝った。

 2019年夏、ユーチューブに自身のチャンネル「Japan Golden Pottery(黄金のように輝く日本の陶器)」を開設し、動画の発信を始めた。三脚を使い、別角度に固定した2台のスマートフォンで、作陶の様子を撮影。時には妻の協力で3台目のスマホが動きのある映像を撮影する。編集や英語の字幕入れも、仕事の空き時間にスマホで行う。

 19年9月に公開した「波紋皿」の制作映像では、のこぎりの刃を使って波模様をつける技法を紹介。現在までに5万回以上もの視聴を記録している。

 最近公開したのは、末期がん患者らの緩和ケアを専門とし、今月、鈴鹿市に開院した「桜の森病院」の巨大な「陶壁」作品。月夜の富士山を背景に咲く桜を表現した作品だ。

 幅3メートルにもなる原寸大の型紙づくりから始めて、薄く延ばした粘土に図柄を転写し、パーツの切り出しへと進む。2度の焼成を経て完成したパーツをジグソーパズルのように組み合わせ、絵を完成させていく。構想から作品完成まで3カ月間の工程を、20分37秒でたどる映像は圧巻だ。

 日本の伝統技法への関心からか、海外からのコメントも多い。3月に公開すると、英語やフランス語、韓国語などで「言葉も出ない」などの書き込みが寄せられた。熊本さんはその一つひとつに返信をつけている。「思わぬ形で、世界の方々とのコミュニケーションが始まったことに驚いている」

 開始から40回を超える動画配信で、紹介できる技法も残り少なくなってきた。しかし、熊本さんは意欲的だ。「配信を続けるうちに、自分の中で挑戦の気持ちが高まってきた。過去に身につけた技法にとどまらず、新たな技法にチャレンジする映像を作り、陶芸ファンを増やしていきたい」と前を向いている。(黄澈)