広島市信用組合・理事長「助けられねば存在意義ない」

聞き手・松田史朗
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 新型コロナウイルスとの闘いが続く中、県内の中小企業が受けてきた金融支援策が4月以降、順次廃止される。売り上げが好転せず、資金繰りに悩む企業をどこまで支援できるのか。広島市信用組合の山本明弘理事長(75)に聞いた。

 ――広島経済の現状は。

 コロナの影響は続き、旅行、ホテルなどは変わらず厳しい。広島市の繁華街の飲食店やホテルでの宴会自粛が響き、おしぼりや食料品などの仕入れ業者も大幅な赤字に陥っている。イベントなども全くだめだ。ただ、政府の給付金や無利子無担保融資のおかげで手元に現金は残り、景気は悪いのに倒産は増えない状況だ。

 ――製造業や運送業の見通しは。

 世界的な半導体不足の状況が長引けばマツダだけでなく、関連・下請け企業にも相当な影響が及ぶだろう。運送業は二極化している。大手の宅配業者は巣ごもり需要で売り上げ増だが、観光バス業者は大手でも仕事が全く入らない。

 一方、野外で密にならずに楽しめるキャンプ用品など、レジャー関連商品の売り上げは好調だ。不動産は飲食店が入るビルなどは売買の取引が鈍い。コロナで先行きの不安感が高まり、オーナーが賃料の入る物件の売買を手控える傾向があるためだ。

 ――国の雇用調整助成金や無利子無担保融資が6月ごろまでに終わる。

 雇用調整助成金が無くなる影響が一番大きいと思う。いま大量の倒産・解雇は起きていないが、企業が売り上げから得ていた現金が、単に借り入れで得た現金に置き換わっているだけだ。新しい支援制度もあるが、立ち上がりは遅い。6月に制度が打ち切られると、事業が好転せぬまま現金を失い、9月ごろに息切れする企業が続出するかもしれない。コロナ収束の見通しが立たない場合、(企業倒産の)もう一つの山場は年末に来るとみている。

 ――地元金融機関としてどう対応するのか。

 現金を失い、瀬戸際の状況にある企業に対し、積極的にリスクを取って融資する。これからは元本の支払いを据え置きしたり、個人向け住宅ローンでも当面の2年間は金利払いのみにしたりといった思いやりのある対応が求められる。ここで逃げるわけにはいかない。コロナ禍で短時間にはなるが、うちは私や職員が直接企業を訪問して顧客のお話に耳を傾ける。信用保証協会の保証付き融資では、企業が必要な資金の半分しか得られない場合は、残りの半分を我々がリスクを引き取ってプロパー融資する。コロナという一過性の危機を顧客とともに乗り切っていきたい。

 ――いまが正念場か。

 そうだ。金融機関の対応次第で広島経済の今後が大きく変わると思う。アフターコロナは、生き残った企業が金融機関を選別する時代になるのではないか。コロナで企業が苦しい時期に助けられなかったら、金融機関の存在意義はない。(聞き手・松田史朗)

 やまもと・あきひろ 山口県生まれ。1968年、広島市信用組合に入り、支店長や本店営業部長などを経て05年、理事長に就任。現在、全国信用協同組合連合会の会長も務める。顧客ニーズを正確につかむために役職員一丸となって現場を訪問する「現場主義」を信条とする。