里人が守り伝える国宝十一面観音像 湖北・観音の里

久保智祥
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渡岸寺観音堂・向源寺(滋賀)

 琵琶湖の北側の湖北地域は、平安時代から仏教文化が栄え、地域で守り伝えた観音菩薩(ぼさつ)像が140体以上点在する「観音の里」と呼ばれる。なかでも屈指の美しさで名高いのが渡岸寺(どうがんじ)観音堂(かんのんどう)(向源寺(こうげんじ))にまつられる国宝の十一面観音立像だ。

 収蔵庫で拝し、しばし時がたつのを忘れた。端正な顔立ちに、193センチの長身の腰を少しひねらせ、天衣は風に揺れるようだ。大きな頭上面や耳飾りが特徴的で、歯を見せて笑う後頭部の「暴悪大笑相」も印象的だ。

 天台宗の影響が色濃い平安時代前期の作とみられ、後に寺が真宗に変わっても宗旨を超えて秘仏として里人が守り伝えた。戦国期の「姉川の戦い」(1570年)の際には僧侶と里人が土に埋めて焼失から救ったという。今は国宝維持保存協賛会のメンバーが交代でお守りをする。松室慈慧(じえ)住職(83)は「自分たちの仏様として守ってくださり、ありがたいことです」。そんな人々を観音菩薩もまた見守っている。温かな交感が里を包む。(久保智祥)

 《メモ》滋賀県長浜市高月町渡岸寺、電話0749・85・2632。JR北陸線高月駅から徒歩5分。拝観料500円。不定休。