佐賀県内で広がる「こども宅食」の支援 見えてきた課題

福井万穂
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 新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、経済的に苦しい子育て家庭に、食品を届ける「こども宅食」のニーズが高まっている。佐賀県内では昨年秋、新たに五つの団体が発足し、支援の輪が広がった。一方で、活動を通じ、色々な課題も見えてきている。(福井万穂)

 唐津市の靈山(よしやま)侑菜さん(33)はこども宅食の団体「Lihi Terra(リヒテラ)」を立ち上げ、昨年10月から活動を始めた。月に1度、市内のひとり親家庭を数世帯まわり、食料などを届けている。

 大阪府出身。結婚を機に4年前、唐津に移住した。夫は、同市鎮西町にある良縁寺で副住職をしている。

 お寺には、お菓子やジュースなどのお供え物や、そうめんやコーヒーといった贈り物がたくさん寄せられる。正月や彼岸、盆の時期は量が多く、食べきれずに捨ててしまうこともあったという。

 「もったいない」。そう感じていた靈山さんは、2019年ごろから、引きこもりの支援団体に寄付を始めた。年に数回、食料品をまとめて団体に送り、支援先に配ってもらう。ただ、誰にどのように届いているのか、自分で見られないことが気がかりだった。

 そんなとき、こども宅食を知った。家庭を訪問し、直接手渡すことを大切にする取り組みだ。共感し、自身も始めることにした。

 夫のお寺だけでなく、近所のお寺からも、日持ちする食料を譲り受けている。知り合いの農家からは、規格外などで売りに出せない野菜やお米をもらう。コスメ関係の企業から、化粧品のサンプルなどをもらうこともあり、支援する家庭の母親に渡している。

 活動には、市社会福祉協議会も協力している。職員の片渕啓太さん(34)は、靈山さんが新たな支援先を訪れる際は一緒に行き、家庭の経済状況などを確認。必要な場合は、社協の支援にもつなぐ。

 靈山さんは「『支援』というより、『おすそわけ』という意識でやっている。余っているものをつなぐハブになって、家族全員を笑顔にしたい」と話す。

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 小城市を中心に活動する「にじいろぽけっと」は、ひとり親家庭だけでなく、コロナの影響で収入が大きく減った家庭も含め、20世帯ほどを支援している。

 代表の原口美和さん(51)は、活動を始めた昨年10月ごろ、訪問先の母親から不安の声を聞いた。春から子どもが中学生になるが、制服や通学用の自転車、ヘルメットなどを買いそろえられるのか……。

 「お下がりでも」という相談だったが、特にヘルメットは安全に関わる。原口さんは、小城ロータリークラブに相談し、共同で購入することにした。市教委を通じ、中学校2校で就学援助を受ける子どもたちに声をかけると、14人が希望。3月に無事、渡すことができた。

 原口さんは「家計が厳しい家庭では、『うちはしょうがない』と、子ども自身も色々なことを諦めてしまいがち。社会が見守っているから、夢を諦めずに頑張って、という思いを込めた」と語る。

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 「一般社団法人こども宅食応援団」(佐賀市)によると、県内では現在、佐賀と唐津、伊万里、小城の4市と吉野ケ里町を活動地域に、計7団体が活動している。

 ただ、活動の輪が広がる一方で、今も支援が届かない家庭もあるのが実情だ。応援団は昨年末、宅食の活動がない地域の人から「食べ物がない、助けてほしい」と連絡を受けた。行政は年末の休みに入っていて、頼る先をなくしていたという。

 支援自体も、いつも順調にいくわけではない。「リヒテラ」の靈山さんは「支援を希望していても、途中で連絡が途絶えてしまう人がいる」と明かす。「食料をもらっているところを、近所の人に見られたくない」「事前のヒアリングで、子どもの不登校や障害のことを知られると困る」といった理由が考えられるという。

 さらに、支援が必要なのは、決してひとり親だけではないこともある。「にじいろぽけっと」の原口さんは、コロナの影響で、ふたり親でも厳しい家庭があると感じている。仕事を失った、正社員や転職の見込みがなくなった、ローンを抱えている――。「ふたり親の場合、支援の対象にならなかったり、助けを求めにくかったりして、困窮が見えにくい」と指摘する。

 宅食の支援は、活動の存在を知って、手を挙げた人にしか届かない。原口さんは「本当に困っている人全員に届いているのか、という不安がある。できれば行政から、把握している困窮世帯に声をかけてもらいたい」と話す。