車いすで公共交通、当事者が思う「もったいなさ」とは

佐藤仙務
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 「佐藤さんって新幹線や飛行機にはどうやって乗るんでしょうか」

 私が人からよく聞かれる質問の一つだ。一般の人からしてみれば、なぜそのような質問をされるのか不思議だと思うが、もちろん理由がある。それは私が寝たきりだからだ。

 この1~2年は新型コロナの感染拡大の影響により、私自身すっかりインドアな生活になってしまったけれど、例年では仕事の用事で県外に出張する機会も多かった。また、自らを「寝たきり社長」と称して社長業を営んでいることもあり、講演会やイベント登壇の依頼というのも日常的だった。他県への移動の際は公共交通機関を使うことが多い。

新幹線個室を利用、飛行機は?

 私が初めて新幹線に乗ったのは小学3年生の頃、東京ディズニーランドに連れて行ってもらった時で、本格的に新幹線に乗るようになったのは20歳を過ぎた辺りの頃だった。

 私が新幹線に乗る時は、多目的室というスペースを借りることが多い。多目的室は通常の車椅子席とは異なり、個室になっていて、新幹線のトイレと洗面台を足したくらいの広さに、ベッドになる座席が設置されている。

 この多目的室は基本的には客席ではなく、急病やけが人、赤ちゃんに授乳する人が一時的に使うもので、体の不自由な人に限り、事前に電話予約をした上で乗り続けることもできる。私のような寝たきりで医療ケアが必要な人にとっては、個室というクローズな空間は大変ありがたい。

 では次に飛行機はどうだろうか。飛行機の場合、新幹線よりも乗ることへのハードルが格段に上がる。その理由は、普段使っている車椅子を機内に持ち込むことができない点にある。

 実は以前に沖縄に行った際、旅行会社や航空会社に「一般的な座席や車椅子に座れない場合はどうしたらよいか」と相談したところ、寝たままの体勢でも搭乗できるようにストレッチャーを用意してくれるという。ただ一方で、私が搭乗するために通常の座席を9席潰すことになるという理由で、その分の料金を支払わなければならないという代償はある。

 もちろん、それでも自分のような寝たきりの体でも遠出を行えることには感謝をしているし、少しずつ選択肢が増えていく時代の流れに喜びさえ感じている。

アナログな手続き、もったいない

 だが私は時折、もったいないなと感じる場面がある。それは公共交通機関における手続きのアナログさだ。

 今述べたように私が新幹線や飛行機に乗れることは知ってもらえたと思うが、正直、障害者が公共交通機関を利用する際の手続きというのはなんとも言えない徒労感を抱くことが多い。

 他の人と同じように乗ることができない障害者である以上、利用する公共交通機関に事前に連絡を取り、必要な配慮や対応を相談するのはマナーだと思うし、それを怠るのは個人的には論外だと思っている。

 しかし、私がここで言いたいのはその一歩手前の段階の話だ。

 理由は定かではないが、飛行機にしろ新幹線にしろ、障害者が搭乗する時に限って、なぜか予約が電話や書面になってしまう。今の時代、飛行機でも新幹線でもインターネットで座席の空き状況を確認でき、簡単にスマホで予約ができる。それが当たり前だというのに、私は今でも新幹線を電話で予約をし、乗車券を駅まで取りに行って、障害者手帳を見せに行かなければならないのだ。

 また、駅員や航空スタッフの目線で考えてみても、属人的な電話対応で障害者への必要な配慮や対応をヒアリングするよりもデータ情報で管理できた方が楽なはずだ。障害者手帳だって、現物を見せる必要があるのかどうかも、いまだによく分からない。

 なにより、ニュースでたびたび話題に上がる障害者と健常者の言った言わないの水掛け論も少なからず、このアナログさが起因していると私は考えている。

私が思う「素敵な社会」とは

 私はもし時代が違って生まれてきていたら、決して今のような活動を送ることはできなかったと思うし、だからこそ、今の時代の情報技術をもっと有効に使うべきだとも考えている。

 要は、「障害者だから優しくしてほしい」なんて言うつもりはないけれど、お互いに無駄な負担を減らし、お互いに頑張らず楽をすることで、障害者と健常者が優しくなれたら、きっとそれが素敵な社会なのだと私は思う。(佐藤仙務)

佐藤仙務

佐藤仙務(さとう・ひさむ)

1991年愛知県生まれ。ウェブ制作会社「仙拓」社長。生まれつき難病の脊髄性筋萎縮症で体の自由が利かない。特別支援学校高等部を卒業した後、19歳で仙拓を設立。講演や執筆などにも注力。著書に「寝たきりだけど社長やってます ―十九歳で社長になった重度障がい者の物語―」(彩図社)など。ユーチューブチャンネル「ひさむちゃん寝る」では動画配信も手がける。