ボツだった「そらまめくん」 再起のきっかけはあの名作

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聞き手・栗田優美
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原点は30年前の社内コンペ

 ふわふわのベッドがお気に入りの「そらまめくん」。今や累計150万部のロングセラーですが、実は一度は没になった過去が。再チャレンジのきっかけになったのは、絵本売り場での偶然でした。

「そらまめくんのベッド」(福音館書店、単行本は1999年刊行、累計151万部) 

そらまめくんの宝物は、雲のようにふわふわで、綿のようにやわらかいベッド。だからだれにも貸してあげません。ある日、そのだいじなベッドが突然無くなってしまったからさあ大変! そらまめくんは必死でベッドをさがしますが……。

 絵本作家になる前にサンリオでキャラクターデザインの仕事をしていました。短大卒業後に就職したので、今から30年近く前のことです。

 その当時、80人ほどのデザイナーがいました。「そらまめくん」のもとになったのは、当時、全員参加の社内コンペに提案したイラストです。豆のコロンとした感じがかわいいのでは、と考えました。ハローキティのように長く愛されるものもありますが、キャラクターにも流行があり、そのころは、少し力の抜けたラフな雰囲気のものがはやっていました。

 コンペに提案した豆のキャラクターのヒントは、実家の家庭菜園にありました。今でこそ開発が進みましたが、埼玉・大宮(現さいたま市)郊外はカブトムシや蛍もいたのどかなところでした。両親が季節の野菜を育て、トマトやキュウリに加え、トウモロコシ、そして空豆や枝豆、落花生などの豆類もありました。

 コンペで私の提案は箸にも棒にもかからず、既存キャラクターの新たな商品づくりや、先輩が考えたものを製品化する仕事に追われる日々に戻りました。

 キャラクターの世界は競争が厳しく、仮に世に出ても、売れて生き残るのはごくわずかです。数字がすべてという現実を見続ける中で、私は、もう少し、愛着を持って大事に育てられないかと思うようになりました。

絵本売り場で驚きの発見

 初めて絵本作家という道を考えたのは、ある日の書店でのことでした。それまではもっぱら洋書の絵本やそこから生まれた雑貨などを参考にしていましたが、その日はなんとなく、日本の絵本を見てみようと思ったのです。

 驚いたことに、売り場には「…

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