川勝氏vs.国交副大臣 静岡知事選、事実上の一騎打ち

黒田壮吉、楢崎貴司 中村純、和田翔太
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 任期満了に伴う静岡県知事選(6月3日告示、6月20日投開票)をめぐり、自民党参院議員の岩井茂樹国土交通副大臣(52)が28日、立候補を表明した。4選をめざす川勝平太知事(72)と事実上の一騎打ちとなる公算が大きい。自民党県連が政治姿勢を批判する川勝氏はリニア中央新幹線の静岡工区の着工を認めておらず、知事選でも焦点になりそうだ。

 この日、東京・永田町で国会議員と県内の県議らをネットで結ぶ緊急会合があった。会合後、岩井氏は議員会館で報道陣の取材に応じ、「県知事選に出馬をさせていただきます」「今までの経験や知識、人間関係などをフル活用して、静岡県のために頑張る決意だ」と語った。

 理由について県内の県議らから立候補の要請があったことなどを挙げ、「男気ではないが、自分の保身ではなく、退路をたってやっていきたいと思った」とした。また、自身の52歳という年齢もあったといい、「政治は体力的に大変で、本当に気合を入れられるのは50代までだと思う。いまは最大のパフォーマンスができるいいタイミングだという判断があった」と説明した。

 自民にとって、知事選での候補者擁立は8年ぶり。前々回知事選(13年)では擁立候補が大敗し、前回(17年)は独自候補を立てることすらできなかった。

 岩井氏と共に取材を受けた上川陽子県連会長は「岩井さんには、政治生命をかけて県民のために、重い決断をしていただいた。県連で一致団結して取り組んでいく」と話した。30日に拡大選対会議を開き、党本部に推薦を求める。

 岩井氏は「政策の話は後日」としたが、知事選ではリニアの静岡工区が最大の焦点になる可能性がある。

 岩井氏は名古屋市生まれで、名古屋大大学院修了。参院議員秘書などを経て、2010年に参院選静岡選挙区で初当選した。16年に再選し、現在2期目。昨年9月に発足した菅内閣で国交副大臣に就任した。

 県選管によると、岩井氏が辞任した場合の補選は今年10月に行われる。黒田壮吉、楢崎貴司)

竹下派の根強い反対「複雑な状況が残っている」

 「選挙は本当に厳しいと思う。なにせ時間がない」

 告示まで約1カ月あまりとなったこの時期にずれ込んだ立候補表明。岩井氏も時間不足を認めざるを得なかった。

 自民は昨年から候補者選定作業を続けてきたが難航。約2週間前に白羽の矢がたったのが岩井氏だった。

 ただ本人が所属する竹下派の反対は根強い。岩井氏も「現状すべてオーケーになっているかというと、複雑な状況が残っている」とし、派閥の了解を得られないまま立候補表明に踏み切ったことを明かした。

 最近の国政選挙の敗北などを理由に党本部には推薦を出すことに慎重な声もあるが、県連の中沢公彦幹事長は28日、「党本部は思いをくみとってくれると信じている」と語った。

 県連内では選挙態勢づくりが急ピッチで進む。静岡市議団は今週初め、立候補を見越して、「県都の良識」と刷りこんだ岩井氏と市議との2連ポスターを発注。大型連休中に街頭に貼り出し、名前の浸透を図るという。県連幹部は言う。「岩井さんは前回選挙で、74万票を獲得している。時間はないが、県連が一枚岩で支援すればいい勝負になる」(中村純、和田翔太、黒田壮吉

川勝知事、岩井氏の出馬表明で心境の変化「政策論争になる」

 川勝平太知事は28日の定例記者会見で、岩井氏が副大臣を務める国交省リニア中央新幹線の事業を所管することを踏まえ、「(岩井氏は)国の顔として出てくる。進める側と止める側。争点にならざるをえない」と述べ、対抗意識をむき出しにした。

 川勝氏は「静岡県は命の水と南アルプスの環境を守るのが大前提だ」と改めて持論を展開。「リニアは静岡県の最大のテーマ、あるいは危機でもある。リニアによって命の水が失われるのか、あるいは南アルプスの環境が守られるのか、その岐路に立っている」と述べ、知事選での勝敗がリニアの方向性に影響を及ぼすとの考えを強調した。

 川勝氏は政党の推薦は受けないと明言しているが、立憲民主党国民民主党は支援する方針だ。この日、川勝氏を支援する県議会「ふじのくに県民クラブ」は議員総会を開き、知事選へ向け一致団結して応援する方針を改めて確認した。

 また、連合静岡も川勝氏の推薦を決めている。ただ支援をめぐっては、同氏の言動や多選をめぐり加盟労組の中から問題視する意見も出て、全会一致にならず不協和音も露呈している。

 川勝氏は今月13日の出馬会見では、選挙期間中は新型コロナ対策など公務に専念するとの見解を示したが、岩井氏の出馬表明を受け心境の変化も見せた。「政策論争になる」と論戦に挑む構えを示した上で、近く4期目に向けた政策を明らかにする機会を設けたいとした。(和田翔太)

【過去3回の知事選 戦いの軌跡】(敬称略)

2009年

当728,706川勝平太  無新

 713,654坂本由紀子 無新

 332,952海野徹   無新

  65,669平野定義  共新

民主党などが推薦した川勝氏が、自民・公明が推す前自民参院議員の坂本氏に競り勝ち初当選。

2013年

当1,080,609川勝平太 無現

   345,617広瀬一郎 無新

    61,980島津幸広 共新

政党の推薦を受けなかった川勝氏が、自民支持の元多摩大教授・広瀬氏を大差で下し再選。

2017年

当 833,389川勝平太 無現

  563,316溝口紀子 無新

川勝氏が五輪銀メダリストの溝口氏を破る。自民は擁立断念し、一部が溝口氏支援に回った。