守れ「ミルキーデイ」 ピンチの温泉街で奮闘する湯守

滝口信之
【動画】週に1度、温泉が白濁する「ミルキーデイ」。それは湯守が温泉を支える証しだった=滝口信之撮影
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 福島県二本松市岳温泉では週に1回、透明な湯が白く濁る日がある。地元では「ミルキーデイ」と呼ばれ、この日を目当てに訪れる人も増えている。コロナ禍で温泉を巡る環境は厳しいが、白濁した湯の裏にある「湯守」の地道な活動は続いている。

 岳温泉は日本百名山の一つとして知られる安達太良山(標高1700メートル)のふもとにある温泉街。1200年を超える歴史があり、現在は大小10軒の温泉旅館が営業し、全国でも珍しい酸性泉として知られる。

 湯守として活動するのは民宿も営むリーダーの武田喜代治さん(70)ら40~70代の男性4人。「温泉街に湯を安定して届けるには、仕事をおろそかにすることはできない」と話す。

 4人は週に1回、温泉街から約8キロ離れた安達太良山の中腹(標高約1300メートル)にある源泉に足を運び、温泉を流す直径約13センチの塩化ビニール製の湯管を掃除する。源泉は硫黄などの成分が強く、空気に触れると「湯の花」が生じ、湯管のつまりの原因となる。放置すれば、管の破裂にもつながるため、掃除のために山に登る。

 現在、源泉は一帯に15カ所点在し、湯の花が詰まりやすい、源泉から1キロの範囲を清掃する。湯管には約20メートルごとに点検口があり、上流の口から長さ約20メートルのロープを流し、下流から引っ張る。先端にはロープや針金で作ったたわしが付いているため、引っ張ると、湯管の内側にこびりついた湯の花も流れ出し、湯が白濁する。これらが温泉街に流れると、ミルキーデイとして楽しめる。

 清掃は季節を問わず必要で、冬は源泉付近の積雪が4メートルを超えることもあり、登山口から歩いて2時間以上掛かる。後継者不足が課題だが、武田さんは「4人とも本業と掛け持ち。湯守の収入だけでの生活は無理で、なかなか若い人を誘いにくい」と話す。

 岳温泉観光協会によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、温泉街では昨年、宿泊客が月に前年比8割減の旅館もあった。民宿を営む武田さんも「東日本大震災でも観光客が減ったが、今回はその時よりも少ない」と嘆く。

 厳しい状況だが、湯守の活動は感染拡大前と同じように毎週欠かさない。武田さんは「観光客がいつ訪れても、いい湯を提供できるよう、コロナ禍でも手を抜かずに続けていきたい」と話す。(滝口信之)