「県内集約」候補地の塩谷町、環境省と対話なく

池田拓哉
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 【栃木】3月25日、塩谷町役場を環境省職員3人と県職員1人が訪れた。事前の約束もなかった。見形和久町長は不在。4人は名刺を置いて帰っていった。

 名刺には「環境省放射性物質汚染廃棄物対策室長 吉野議章」とあった。吉野室長は取材に対し、「栃木県内で別の用事があって立ち寄った。(長期管理施設の)担当職員にあいさつをしたかった。もともと町長に会う予定はなかった」と答えた。しかし担当職員も不在だった。

 町によると、数日前に環境省から「近く訪れる」と連絡があったが、日時は伝えられなかった。見形町長は「環境省は町と対話をしたいのか、そうでないのか。近年は建設の熱意を感じない」と困惑した。

 2014年7月、環境省は塩谷町の国有林を指定廃棄物最終処分場の候補地に選んだ。当初、矢板市を候補地に挙げたが、「地元自治体との意思疎通が不足していた」と選定作業をやり直した。県と市町のトップを集めて計4回の会議を開いて県内に処分場1カ所を建設することについて改めて理解を求めた。

 塩谷町では住民ぐるみの反発運動が起きた。候補地の高原山から約4キロの場所には、1985年に環境庁(当時)が「名水百選」に定めた尚仁沢湧水(しょうじんざわゆうすい)の源泉がある。わき出る水は水田に流れ、日本酒に生かされる。

 「建設反対」「白紙撤回まで頑張ろう」。環境省に抗議する看板や旗が町内にいくつも立てられた。国は現在も候補地の詳細調査に入れないでいる。

 攻防の転換点は15年9月の関東・東北豪雨だった。候補地周辺は川に沿って長さ約100メートル、幅20~30メートルに渡って冠水し、流木や川の浸食も確認された。

 町は、市町村長会議で確認された候補地選定のルールに基づき、高原山が「自然災害を考慮して避けるべき地域」にあたると主張。見形町長は同年12月、環境省に候補地の「返上」を伝え、以後の話し合いを拒む姿勢を示した。

 反対運動から7年近くが経過し、町中の看板の文字は色あせてきた。町民組織「反対同盟会」の君島勝美会長(67)は「住民も環境省も疲れている。3年ほど前から、大々的な反対運動が町の印象を損うとの意見が町民から出始めた。環境省職員も『あの場所に造るのは無理ですね』と本音を漏らすようになった」。

 今月20日、塩谷町議選が告示された。選挙カーから候補者の声が響く町役場で見形町長がつぶやいた。「ある国会議員には『建設を受け入れて国からお金を引き出せ』と言われた。町議の中にも同じ考えがあるかもしれないが、今はそうした声が封じられている状態。私が町長のうちは」

 本来、指定廃棄物東京電力福島第一原発の周辺に集約すべきだと考えているという。「県内の指定廃棄物を県内の1カ所に集約するならば、圧倒的に量が多い那須塩原市か那須町ではないか。でも、県内の自治体は原発関連の補助金をもらっていないし、みんな被害者だから押しつけるようなことは言いたくない。環境省とは民主主義をかけた戦いだと思っている」

 見形町長は、「調整役」を自認する県や福田富一知事の姿勢にも不満を感じている。「当初、県職員には建設受け入れを迫られた。県内に集約したいなら、知事は国と一緒に候補地の再選定に動くべきだ。いつまでも不安を抱く町民のことを考えてほしい」

 塩谷町が候補地に選ばれた直後の14年9月、福田知事は高原山を視察。「県内はどこに行っても川もあれば沢もある。処分場を県内のどこかに受け入れ、一刻も早く整備して安全な状態にしなければならないという声なき声にも応えていかねばならない」と語った。

 あれから6年半。福田知事は28日、朝日新聞の取材に「塩谷町に造ることは極めて厳しい。小泉進次郎環境相に『県内1カ所での集約は変わらないのか』と聞いてみたい。6カ所で暫定集約後、新たに再集約する議論が必要になるかもしれない」と語った。(池田拓哉)