「つまらなければ信用がた落ち」ぐりとぐらが生まれた日

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聞き手・中井なつみ
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 「このよでいちばんすきなのは おりょうりすること たべること」……。楽しい名調子で半世紀以上読み継がれる絵本「ぐりとぐら」。5日のこどもの日を前に、その誕生秘話を作者の中川李枝子さんに語ってもらいました。子ども心にあこがれた大きなカステラや、ぐりとぐらの名前の由来とは。

「ぐりとぐら」(福音館書店、1963年、累計538万部)

 ふたごののねずみのぐりとぐらは、料理をすることと、食べることが大好き。ある日、森の中で大きなたまごを見つけました。「どうやって運ぶ?」「何を作る?」……。考えた末、大きなカステラを作ることにしました。

誕生は駒沢の「みどり保育園」

 「ぐりとぐら」の話を書いたのは、私が東京・駒沢の原っぱにあった無認可の保育園「みどり保育園」で働いていたときです。園長は、天谷保子先生、30歳。そこに、東京都立高等保母学院を出たての20歳の私が、主任保母として加わりました。近所に住む30人ぐらいの子どもたちが通ってくる、そんな保育園でした。

 園長先生は、「子どもたちが毎日喜んで通ってくる、欠席のない保育をしましょう」と張り切っていました。私も毎朝、「今日はどうやって子どもたちと楽しもうか」「今日はなにして遊ぼうか」と、考えながら保育園に通っていました。

 保育園で毎日見ていると、子どもは遊びながら育つということがよくわかります。遊びは、子どもたちにとって、心身の大切な栄養です。頭と体と心をたくさん使う、いわゆる「よい遊び」をしなくてはいけません。それを見守っていくのが、主任保母のつとめであると、私なりに結論を出したのです。

10人いたら10人を満足させる

 子どもたちは保育園がつまらなければ原っぱに遊びに行ってしまいます。「保育園の中でしかできない楽しみは何か」と考えたのが、絵本とお話でした。

 楽しいお話はないか、楽しい…

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